執筆者 | 安田 武彦 (東洋大学) |
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研究プロジェクト | 通商産業政策・経済産業政策の主要課題の史的研究 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
政策史・政策評価プログラム (第三期:2011~2015年度)
「通商産業政策・経済産業政策の主要課題の史的研究」プロジェクト
我が国において中小企業に対してきめ細かな支援政策が講じられている。本稿はこうした中小企業支援施策の情報がどの程度、認知されているのかについて独自の調査で概観するとともに、認知度を決定する要因を分析するものである。
調査の結果からは、2000年代の主要中小企業施策についてではあるが、総じて施策認知度が低いこと、施策認知度は企業の規模、経営形態といった企業属性の違いによって施策の認知度が異なるとともに、施策の種類によっても認知度が異なることが明らかになった。
また、施策の浸透度の低さの原因を、(1)施策を知る必要性がないと企業側が評価していることによるもの、(2)そもそも、施策を理解する時間がないことのいずれかに分けて分析すると、後者の影響が大きいことが分かった。
以上の結果は施策の中小企業への認知のためには、広報パンフレットのコンテンツの充実や冊数の増加のみならず、どのような経路をとり、手軽に政策情報を入手できるようにするのかの検討も重要であるということがわかる。
では、この分野、どのようなことが考えられるのか。
1つヒントになるのは、比較的良好な認知度をあげている信用保証制度のネットワークを他の施策の認知のための経路としてより活用できないかということである。それは、言い換えると金融機関を通じた施策認知の経路である。
たとえば技術開発関連の補助金や商店街整備のための国、都道府県、市町村の補助金は金融機関の融資を増やすという意味でも金融機関にとってもメリットのあるものである。
モノやサービスを直接扱うメーカーなどと違う金融機関には政策を中小企業が認知するに当たり特殊な地位にあることには注目が置かれるべきである。金融機関の特徴は、「モノ」の世界(ここではすべてが必ずしも論理的に展開するわけではない)を「文書化」(「書類化」と言ってもよい)することにより、一般普遍的な論理の世界に載せることである。別の言い方をすると、不確実性を完全に拭うことができないという性質を本来的に有する設備投資や研究開発に係る資金需要を、論理的文書で経済的に意味のあるものとするのが金融機関の能力ということである。そして、このような不確実性と論理の橋渡し能力は、精緻な理念に基づき構築された政府の政策を諸事情が絡み合った現実に適用する場合でも有用である。
中小企業のほとんどは金融機関とのつながりを持つ。そうした金融機関が政策利用を含めたワンストップサービスの中核となることを期待したい。
内容を詳しく知っている | 内容を大体知っている | 内容をあまり知らないが、 名前は聞いたことがある | 名前を聞いたことがない | |
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経営革新 | 2.1% 22 | 8.0% 82 | 24.8% 255 | 65.1% 671 |
新連携支援 | 1.4% 14 | 4.4% 45 | 16.4% 169 | 77.9% 802 |
地域資源活用支援 | 1.4% 14 | 6.5% 67 | 20.7% 213 | 71.5% 736 |
農商工連携支援 | 1.1% 11 | 5.2% 54 | 20.3% 211 | 72.5% 754 |
中小企業再生支援協議会 | 1.6% 17 | 7.8% 81 | 33.3% 346 | 56.3% 586 |
セーフティネット保証制度 | 6.3% 65 | 14.3% 149 | 37.8% 393 | 40.7% 423 |
事業承継支援 | 1.3% 14 | 7.7% 80 | 26.8% 279 | 63.2% 657 |
(注)各制度の具体的内容は付録2参照。 (出所)WEB調査(「中小企業施策の普及に関するアンケート調査」)より作成 |