ノンテクニカルサマリー

電力自由化に関わる市場設計の国際比較研究~欧州における電力の最終需給調整を中心として~

執筆者 八田 達夫 (ファカルティフェロー)
三木 陽介 (経済同友会政策分析センター)
研究プロジェクト 電力自由化に関わる国際比較研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

新しい産業政策プログラム (第三期:2011~2015年度)
「電力自由化に関わる国際比較研究」プロジェクト

東日本大震災後に計画停電および電力制限令の発令が行われた。このことは、我が国の電力システムが、電力逼迫時に需給を調整する価格メカニズムを欠くものであることを明らかにした。

まず、現在の日本では、インバランス精算価格が発動時の需給逼迫度を反映したものになっていない。その分停電の可能性が高められている。

次に、日本では、電力需給の逼迫時に、インバランス精算価格は上がらないので、需要家は好きなだけ買う。電力会社は、需要量に対応していくらでも供給しなければならないので、夏のほんの数日の逼迫時に備えて、膨大な予備発電能力をかかえてきた。これは日本の電力価格を不必要に引き上げてきた原因でもあった。

日本では電力システムの大改革が行われようとしている。この改革で導入されるもっとも大きな制度は、「電力の最終需給調整への市場メカニズムの導入」である。具体的には、主としてインバランス精算制度と調整電力の入札制度である。これらの制度は、電力消費の時点における需給の逼迫状況をインバランス価格を通じて発電者にも需要家にも伝え、需給の乖離を縮小するために有効である。

電力システム改革に長い経験を持つ北欧や、比較的最近自由化したドイツでは、これらの問題を解決するために電力の自由化を推進してきた。

本研究では日本のシステム改革に資するべく、以下の諸点をこれら欧州諸国の市場制度の国際比較により解明する。

(1)予備電力および調整電力の入力方式
(2)インバランス精算の方式
(3)TSO(送電系統運用者)間の協力体制
(4)balance responsible companiesが各国のリアルタイム市場で果たしている機能
(5)各国間のネットワークの連系線における混雑解消の諸方式

結論では、欧州諸国の調整電力市場が日本のシステム改革に与える示唆を列挙している。特に、改革が最終段階を迎えるまでの経過措置のあり方に大きな示唆を与えることが明らかになる。

図:スウェーデンの電力市場