執筆者 | 後 房雄 (ファカルティフェロー) |
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研究プロジェクト | 日本におけるサードセクターの経営実態と公共サービス改革に関する調査研究 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
特定研究 (第三期:2011~2015年度)
「日本におけるサードセクターの経営実態と公共サービス改革に関する調査研究」プロジェクト
第1回のサードセクター調査(2010年)に続く第2回調査(2012年)の結果を紹介、分析することによって、日本において政府行政セクター、市場セクターと並ぶサードセクターを構築するための現状の実態と課題を検討した。特に注目されるのは、2008年から制度が施行された一般社団法人、一般財団法人の急増である。しかも、これらの一般法人のなかではあえて「非営利型」を選ぶ団体が大半(80%強)となっている。
また、今回の調査では、医療法人を加えたこと、職業訓練法人、更生保護法人については全数調査としたこと、協同組合についてより詳細な分類を導入したことなどによって、前回以上にサードセクター諸組織の全体像を浮き彫りにすることができた。
まず、組織的力量については、最高15点から最低-18点まで大きな格差があることが再度確認された(組織的力量を示す23の項目について、高い場合に+1点、低い場合に-1点として集計)。
【高い】
学校法人(15)、信用金庫など(15)、消費生活協同組合(14)、社会福祉法人(13)、医療法人(12)、農業協同組合(9)、特殊法人など(9)、共済組合(7)
【中間】
公益社団法人(3)、その他の法人(1)、一般財団法人(上記以外)(0)、公益財団法人(-2)、特例民法法人(財団)(-3)、一般社団法人(上記以外)(-3)、一般財団法人(非営利型)(-4)、更生保護法人(-4)、一般社団法人(非営利型)(-5)、特例民法法人(社団)(-6)、漁業協同組合(-6)、森林組合(-7)
【低い】
特定非営利活動法人(-10)、中小企業等協同組合(-12)、職業訓練法人(-14)、法人格なし(地縁以外)(-17)、法人格なし(地縁)(-18)
収入構造を、「稼いだ収入(earned income)」と「もらった収入(voluntary income)」の割合と公的資金の割合によって分類した結果においても、表のような顕著なタイプの違いをあらためて確認することができた。
日本の非営利組織において、政府行政から「稼いだ収入」(バウチャー制度、事業委託、指定管理者制度など)の割合が顕著に高い実態を踏まえ、「法人形態による参入規制や特定の団体の随意契約による優遇は廃止して他のサードセクター組織や民間企業との間での健全な競争を導入すること」の重要性を再度強調しておきたい。
最後に、一般法人(社団、財団)の設立が急増しており、現在のペースが維持されるとすれば、2014年4月の段階で特定非営利活動法人や医療法人を抜いて法人数において最多となると推定されることに注意を喚起しておきたい。これにより、一般法人を軸に、日本の非営利セクターの統一が進み始める可能性が出てきたとも考えられる。それを現実のものとするためにも、一般法人制度の不十分点(残余財産の配分、税額控除制度など)を早急に是正するとともに、行政側、民間側の双方において支援体制を整備すべきである。