ノンテクニカルサマリー

アジアにおけるビジネス展開

執筆者 一條 和生 (ファカルティフェロー)
研究プロジェクト アジアにおけるビジネス・人材戦略研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

人的資本プログラム (第三期:2011~2015年度)
「アジアにおけるビジネス・人材戦略研究」プロジェクト

問題意識と研究目的

我が国企業の成長には、アジアを初めとするグローバル市場で事業展開を拡大することが不可欠である。しかしながら、昨今のアジア企業との競争激化の中で、日本企業は苦戦を強いられている。要因としては、日本の企業には、アジア・ビジネスを初めとするグローバルビジネスに対する知見・ノウハウが欠如し、ベストプラクティスの研究が不足していることが考えられる。

一方、アジアの市場拡大、およびそこにおける企業の躍進はここ数年においてめざましく、アジア・ビジネスの知見・ノウハウについて経営学の視点から分析した戦略研究は、大学、民間の研究機関でも追いついていないのが実情である。とりわけ、日本企業の中国、アジアにおけるビジネス展開の事例は不足している。事例を科学的に研究し、そこから成功のキーファクターを抽出し、その上でその学習を通じて(ケース・スタディ)アジアで事業を伸ばすビジネスリーダーを育成することは、我が国企業のアジアにおけるダイナミックな事業の成長に不可欠であると考えられる。

このような状況を鑑み、アジア企業の成功事例やアジアに進出する欧米企業や日本企業などのグローバルビジネス戦略を徹底的に分析し、日本企業の弱みを補完し強みを生かすにはどのような戦略が有効か研究を行うことを計画した。将来的には研究に基づいて作成されたケース・スタディを使い、グローバル経営を担う人材を育成する拠点を構築することも構想している。

分析結果

日本企業がアジアで事業を延ばす上で鍵になるのは、
(1)きわめて明確な戦略、
(2)日本企業の強みの駆使、
(3)日本企業の経営理念、フィロソフィーを深く理解したローカル人材の獲得と育成、
(4)ローカル人材のリーダーシップに基づく事業の成長、
(5)アジアにおける難しい課題を克服する中から創造された新しいビジネスモデル、
である。それらをまとめて、アジアにおける事業成長のフレームワークを3LLモデルと呼ぶことにする (Leveraging Local innovation, Leveraging Local Talent, Leveraging Local brand)。

3LLモデルの日本企業による実行を促進するために、
(1)国際事業や戦略的思考を学ぶ教育機会の提供、
(2)アジアのトップクラスの学生、若手社員に日本企業の競争優位を学ぶ学習機会の提供、
(3)日本企業のトップマネジメントにおける多様性の拡大(人種、文化的バックグラウンド、性別)、
(4)アジア・ビジネスリーダー間のネットワークの強化、
(5)現地ローカル人材育成へのインセンティブ、
を実現すための政策的措置が求められる。