ノンテクニカルサマリー

中国産業別労働投入の再推計1949-2009

執筆者 伍 暁鷹 (一橋大学経済研究所)
岳 希明 (中国人民大学財政金融学院)
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業・企業生産性向上プログラム (第三期:2011~2015年度)
「東アジア産業生産性」プロジェクト

中国経済の成長要因を分析する際、如何に労働投入を適切に計測するかが重要である。これまでの殆どの研究は、単純に労働者数を労働投入として用いてきたが、これは暗黙的にすべての労働者の質は同一であると仮定している。従って、本稿の目的は、労働者の質を考慮し、労働投入の再推計を試み、経済成長への影響を明らかにすることにある。まず1949-2009年の期間における中国産業別労働人口における雇用と賃金のマトリックスを構築する。具体的には、性別、年齢、教育レベル、産業、企業所有形態を考慮し、労働投入成長率を量と質の効果に分解する。我々の暫定結果によれば、労働投入の年成長率は改革開放前の6.9%から改革開放後の3.8%まで落ち込んだことがわかった。これは計画経済期において、大量な過剰労働者が存在していたと考えられる。また、労働の「質」の経済成長への影響を見てみると、計画経済期では年成長率0.8%を寄与したが、改革開放期では少しも寄与しなかった(下表を参照)。さらに、計画経済期においては、産業構造および年齢構造(年功序列や経験を反映している)の変化が、労働の「質」の変化を大体説明できることが分かった。注意すべきなのは、1990年代に入ると、教育は経済成長への最も重要な効果を示したが、中国のWTO加盟と同時に、その効果はマイナスに転じた。これは、中国の産業発展が依然として労働集約型であることを反映していると考えられる。

表:1949-2009年における中国産業別労働投入年成長率(時間ベース)と基本的労働指標(年率)
表:1949-2009年における中国産業別労働投入年成長率(時間ベース)と基本的労働指標(年率)
出所:著者推計