ノンテクニカルサマリー

R&D税額控除がR&D支出に与える効果:日本の2003年税制改正を用いた検証

執筆者 笠原 博幸 (ブリティッシュコロンビア大学)/下津 克己 (一橋大学)/鈴木 通雄 (東京大学)
研究プロジェクト 法人課税制度の政策評価
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

社会保障・税財政プログラム (第三期:2011~2015年度)
「法人課税制度の政策評価」プロジェクト

税額控除は、企業のR&D活動に、どのようなメカニズムを通じて、どの程度の影響を与えるのであろうか?

2003年の税制改正は、企業のR&D税額控除に大きな変化をもたらした。2002年までの増加型税額控除では、過去のR&D支出を上回るR&D支出の部分のみに対して税額控除が適用された。これに対して、2003年より導入された総額型税額控除では、過去のR&D支出に関わらず、R&D支出の総額に対して税額控除が適用された。この結果、特に、R&D投資を恒常的に行っている企業は、新税制によって大きな恩恵を被った。

本研究は、2003年の税制改正が企業R&D投資額に与えた影響を検証した。統計的分析によって、2003年税制改正による実効R&D税額控除率の変化は、R&D投資に対して正の効果をもたらしたことが実証された。R&D税額控除率の1%の上昇は、企業のR&D支出を約2%増大させることが示された。

本研究は、さらに、R&D税額控除は、企業の予算制約/借り入れ制約を緩めることにより、企業のR&D投資を促進することを発見した。

推定結果:被説明変数は2002年から2003年におけるR&D支出の変化
推定結果:被説明変数は2002年から2003年におけるR&D支出の変化