ノンテクニカルサマリー

東アジアエレクトロニクスデータベースの構築と日本企業の国際競争力の分析

執筆者 元橋 一之 (ファカルティフェロー)
研究プロジェクト ITと生産性に関する実証分析
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

問題意識と分析の内容

日本のエレクトロニクス産業の国際競争力が低下しているのではないかといわれているが、定量的な分析によって俯瞰的に評価を行ったものは見当たらない。そこで、ここでは日本、中国、韓国、台湾、米国における貿易統計と生産統計を接続した産業レベルデータベースを構築した。また、日本企業の海外における活動についても分析に取り込むために、海外事業活動基本調査のデータも接続して、1996年から2005年までの間の国際競争力の変化について分析を行った。

結果のポイント

エレクトロニクス産業全体を、民生用電気・電子機械、コンピュータ、通信機械、産業用電気機械、半導体・集積回路および電子部品の6分野に分けてみると、重電と電子部品を除く分野で日本の競争力の低下がみられた。また、成長が著しい中国市場についてみると多くの製品でマーケットシェアを失っている。ただし、製品設計の複雑化・モジュール化の進展に伴って、半導体・集積回路や電子部品などの部品関係の市場は、それ以外の製品市場に比べて急速に拡大している。

図 エレクトロニクス産業の分野別に見た日本企業の競争力指数(注)
図 エレクトロニクス産業の分野別に見た日本企業の競争力指数
(注)貿易統計によって(輸出-輸入)/(輸出+輸入)を計算したもの。ただし海外生産に伴う逆輸入などについては補正を行っている。

インプリケーション

日本のエレクトロニクス産業の競争力を維持するためには、比較的に競争力のある部品産業を中心とした技術経営戦略を構築するとともに、中国などの成長市場におけるグローバル戦略に力を入れていくことが重要である。

政策的には日本企業が競争力を有している電子部品や産業用電気機械の分野でその地位を確固たるものにすべく支援を行っていくことが重要である。ただし、具体的な企業戦略についてはそれぞれの企業の判断によるところが多いので、政策の位置づけはあくまで間接的なものに留まるであろう。たとえば、企業が海外展開を行う上でメリットの大きいFTAの推進や海外活動による移転所得に関する税負担の軽減などが重要であると考える。その一方で、企業活動のグローバル化は国内産業や雇用に対する影響が懸念されることから、地域における産業活性化対策や海外展開が難しい中小企業対策などの手当てを行っていくことも必要である。