ノンテクニカルサマリー

IPTV(インターネットプロトコルTV)サービスの普及に関する日韓比較分析

執筆者 衣笠 慧 (日本銀行)/元橋 一之 (ファカルティフェロー)/ Yeong-Wha SAWNG (ETRI)/ 寺田 真一郎 (東京大学)
研究プロジェクト ITと生産性に関する実証分析
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

問題意識

情報技術の進展によって、通信、インターネット、放送の融合(デジタルコンバージェンス)が進んでいる。ここでは、このアプリケーションの1つであるIPTV(インターネットプロトコルTV)に着目して、普及が進んでいる韓国と遅れている日本の違いは何か、定量的な分析を行った。

分析の方法論と結果のポイント

分析のモデルとしては、TAM(Technology Acceptance Model:技術受容モデル)を用いた。TAMは、商品・サービスの採用にあたって、当該商品・サービスの「容易性」、「有用性」、「態度」、「採用」の相互関係について分析する手法である。分析の結果、これらの因子について下図の関係があることが分かった。

図 日韓のIPTV採用に関する推計結果
図 日韓のIPTV採用に関する推計結果
(注)それぞれのパスにおいて共分散構造分析を行った結果、利用者、非利用者のそれぞれについて有意な関係が見られたかを示したもの。また日韓の比較結果も併せて示している。

まず、日韓両国とも、IPTVの採用にあたって、IPTVの利用者については「有用性」、非利用者については「操作の容易性」が重要であることが分かった。これはハイテク機器に共通的に見られる現象であるが、IPTV普及に際しては実際に使ってもらってみることが大切であることを示している。また、韓国人と比べて日本においては、「有用性」を重視する傾向が強く、サービスの機能を重視する特性があることが分かった。

インプリケーション

日本の消費者は商品に対して高い品質を求めて、その洗練された消費者ニーズが日本のエレクトロニクス産業の競争力の源泉になったという見方がある。ただし、現在では、その商品の要求水準を上げすぎて国際的な標準レベルから大きくかい離し、日本の「ガラパゴス化」と揶揄されることがある。日本と比較的似ている韓国と比べても日本人は商品の「有用性」をより重視することがわかり、これまで逸話的に言われていた傾向を定量的に示す結果が得られた。

従って、日本企業としては、中国やインドなどの新興国市場が広がる中で、商品設計にあたって日本の消費者の要求に応えることに傾注するのではなく、グローバルにマーケティング活動を進めることが必要である。また、政策的にも日本企業のグローバル活動を支援する方向性(FTAの推進、海外ビジネスに関する情報提供・進出支援、国際移転税制の軽減など)を進めることが重要である。