政策研究領域(隣接基礎研究領域) A. 金融構造、コーポレート・ガバナンスの展開等、企業関連制度

金融・産業ネットワーク研究会および物価・賃金ダイナミクス研究会

プロジェクトリーダー/サブリーダー

渡辺 努 (ファカルティフェロー)

リーダー

植杉 威一郎 顔写真

植杉 威一郎 (上席研究員)

サブリーダー

プロジェクト概要

2009年度~2010年度

1)金融・産業ネットワーク研究会
本研究プロジェクトでは、取引関係をはじめとする企業同士のつながり、リレーションシップという言葉に象徴される企業と金融機関のつながりに焦点を当て、これらの成り立ちや企業パフォーマンスに与える影響を、従来は入手が困難であった企業レベルのデータを活用して分析する。特に、昨年来の急激な経済規模の縮小によりこれらのつながりに生じた変化に注目する。たとえば、企業と金融機関の関係については、信用保証制度をはじめとする政府部門の関与が企業の資金調達やリレーションシップに与える影響、金融機関における意思決定構造の影響、スコアリング融資など近年盛んに用いられた貸出手法がもたらした影響などに焦点を当てる。

2)物価・賃金ダイナミクス研究会
本研究プロジェクトではミクロ価格情報を活用し物価変動ダイナミクスを解明する。これまでの物価研究は消費者物価などの集計統計を用いるものが主流であった。しかし集計統計を用いた解析には限界がある。本研究では、ミクロレベルでの企業の価格設定行動を仔細に分析し、そこを出発点としてマクロの物価変動ダイナミクスに迫るという新しい接近法を採る。本年度はわが国で過去10年間続いてきたデフレーションの発生メカニズムの解明を中心に分析を行う。

2008年度

(1)金融・産業ネットワーク研究会

  1. 複数行取引のコストとベネフィット、金融機関の審査能力

    ① 新規借入契約における金融機関間のバーゲニングの構造を分析することで、複数行取引の意義を明らかにする。
    ② 貸出決定までのプロセスを類型化し、金融機関間の行動の差異を明らかにする。
    ③ 目に見える情報以外に基づく銀行の審査による借り手企業のパフォーマンスを実証する。

  2. 銀行借入の代替手段としての企業間信用の役割

    ① 資金調達が容易な企業が、借入制約の厳しい企業に対して企業間信用を供与しているかを検証する。
    ② 金融機関からの借入と企業間信用は代替的と言われることが多いが、企業間信用の価格は外部からは分からないために、どのような理由で企業間信用と銀行借入が選択されるのかを明らかにする。

  3. 企業間の取引ネットワークと企業行動との関係

    ① 企業の退出において取引ネットワークがどのような役割を果たすかを分析する。
    ② 製造業の仕入・販売ネットワークで、需要の不確実性が及ぼす影響を分析する。
    ③ 地球シミュレータを利用して、企業間の取引関係ネットワークの構造を分析する

(2)物価・賃金ダイナミクス研究会
本研究では、ミクロレベルでの企業の価格設定行動を仔細に分析し、そこを出発点としてマクロの物価変動ダイナミクスに迫るという新しい接近法を採る。
本年度は以下の分析作業を行う。

  1. Home Scanner Data(家計がスキャナーを用いて記録した購買履歴をデータ化したもの)を用いて価格の店舗間のばらつきに関する分析を行う。特に物価上昇率とばらつきの関係を解明する。
  2. Home Scanner Data及びStore Scanner Data(POSデータ)を用いてプロダクトイノベーションと景気循環の関係に関する分析を行う。
  3. デジタル家電の価格変動についてオンライン市場とオフライン市場の比較を行う。
  4. 賃金粘着性に関する分析を継続する。

2007年度

1.金融・産業ネットワーク研究会
日本経済が長期にわたる景気停滞を脱し緩やかな景気回復へと至る過程において、金融ネットワーク(企業と金融機関の間の金融取引関係・資本取引関係)、および産業ネットワーク(企業間の商取引・資本取引関係)は大きな変容を遂げてきた。本研究会では、大企業・中小企業および金融機関の財務データ、企業・金融機関の取引関係データを用いてこの変容を実証的に解析する。それにより,今後の日本経済の安定的な成長にとって望ましい金融・産業ネットワークのあり方を明らかにする。また、それを実現するための政策、制度のあり方についても検討を加える。

2.物価・賃金ダイナミクス研究会
1980年代以降、物価上昇率と景気の関係(フィリップス曲線)が不安定化している。具体的には、1980年代後半のバブル時代には景気の超過熱にもかかわらず物価が安定を続けるという現象があり、その反対に、1990年代に入ると、経済が急速に冷え込んでいく中で物価がさほど大きく下落しないという現象があった。このようなフィリップス曲線の不安定化は日本だけのことではなく、米国や欧州などでも観察されている。本プロジェクトではこの理由を解明し、政策運営に役立つ知見を得ることを目的とする。本プロジェクトの最大の特徴は、ミクロ情報を活用することである。これまでの物価研究は、消費者物価などの集計統計を用いるものが主流であった。しかし集計統計を用いた解析には限界がある。本プロジェクトでは、ミクロレベルでの企業の価格設定行動を仔細に分析し、そこを出発点としてマクロのフィリップス曲線の不安定性を解明するという接近法を採る。

プロジェクト期間: 2007年7月10日 〜 2011年3月31日

主要成果物

2011年度の成果

RIETIディスカッション・ペーパー

2010年度の成果

RIETIディスカッション・ペーパー

RIETIポリシー・ディスカッション・ペーパー

2009年度の成果

RIETIディスカッション・ペーパー

2008年度の成果

RIETIディスカッション・ペーパー

RIETIポリシー・ディスカッション・ペーパー

出版物

RIETI政策シンポジウム

2007年度の成果

RIETIディスカッション・ペーパー