「三本の矢」政策パッケージへの期待とリスク:投稿意見
後藤 康雄
上席研究員
デマンドサイドからの成長戦略
ITコンサルタント 村上 裕康
アベノミクスによる第1の矢「金融緩和政策」は期待以上の成果を上げている。円安で企業決算が好転し、株価が上昇している。しかし、円安の恩恵が、企業決算の好転および資産価格の上昇に留まり、内需の拡大に繋がるのか、世界中が注視している。そこで、重要になるのが第三の矢「成長戦略」である。
安倍首相は「成長戦略」のキーワードとして、「チャレンジ」、「海外展開」、「イノベーション」を上げている。企業の国際競争力を向上し、アジア経済の発展を取り込んでゆくという考え方に異論はない。しかし、歴代の政権が掲げた「成長戦略」から飛躍しているようには思えない。そこに共通しているのは、サプライサイドの強化であり、需要者であるデマンドサイドの強化という視点が欠けている。
「日本人の生活は十分に豊かであり、需要の飽和ともいうべき状態にある」という議論もある。このような議論に対して「内需は飽和しているのだから海外に販路を求める」という意見とともに、「潜在的な需要を発掘するためのイノベーションが必要である」という意見がある。共に、サプライサイドからの見方である。
日本人のワークライフバランスが歪んでいることが問題になっている。ブラック企業がはびこり、24時間営業のコンビニ文化が蔓延する状況も世界標準からかけ離れている。経済の繁栄が、所得を増やし、労働時間を短縮することで、生活の豊かさにつながる。生活の豊かさが、新たな消費を生み、需要の飽和を乗り越える。
「成長戦略」がサプライサイドの強化とともにデマンドサイドの強化を合わせ持つことによって、バランスのとれた成長戦略になる。
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