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e-Life Blog キーマンに聞く

※本プロジェクトは、終了しております。

【特別インタビュー】e-Life Blog キーマンに聞く

村上敬亮課長補佐/森川毅係長

  • 情報政策課 村上敬亮課長補佐
  • 情報経済課 森川毅係長
  • (聞き手 RIETI編集部 谷本桐子)

■谷本
-まず最初に、この企画を始めるに当たっての経緯などを、お聞かせ下さい。

■「情報家電Blog」開始の経緯
このブログのベースになっているのが、「情報家電産業の収益力強化に向けた道筋」[PDF:925KB]という文書なんですが、これは、商務情報政策局内の私的な勉強会として、豊田正和商務情報政策局長のイニシアチブで始まったもので、ここ半年間、業務の傍ら、朝とか深夜に勉強会を重ねて作り上げたものです。執筆者はそれぞれ担当する分野について相当勉強し直していて、中には1人で百社弱をヒアリングして回った人もいます。この文書自体は、組織で出しているものですが、そのような成り立ち上、政策担当者個人の知見も色濃く反映されています。

METIでもこの前「新産業創造戦略」をリリースしましたが、その延長線上にこの文書は位置しています。すなわち、従来の業界が規定する産業構造ではなく、製品ごとに得意とする企業(人材)が集まるという「柔構造」、RIETI的な言い方をすれば「モジュール」になると思うのですが、そのような産業構造に日本経済が変化しつつあるのではないかという問題意識をベースにすると、情報家電のようなジャンルは、その是非を先行的に検討するには、絶好の分野であると考えます。
新産業創造戦略は「産業群」と呼んでいますが、その産業群における政策戦略について、担当者が私見も交えつつ書いた政策の卵とも言うべきものが、「情報家電産業の収益力強化に向けた道筋」なのです。まだ生煮えな部分も多々あるますが。

■谷本
-今回は、各章毎にウェブログ(Blog、ブログ)を開設するという試みをするわけですが、Blogはネットユーザの間には爆発的な広がりを見せていますが、政策当局が、しかも現役官僚が実名で行う、というのは霞ヶ関のみならず世界的にも稀ではないかと思うのですが、Blog形式を採用した理由は何なのでしょうか?

■IT政策だからこそ、Blogの価値を引き出せる
通常、この手の政策の卵の文書は、まず審議会や研究会にかけて、パブリックコメントを行って、答申とする、という形で民間の方の意見を聞く、というのが一般的です。それに対して、今回Blogを採用した理由は3点ほどあげられます。まず、今回の文書を見て頂ければ分かりますが、個別の市場戦略に近いような話も一部出てきます。そうなると、細かい話になりますから、審議会や研究会で大人数で討議するのは向かない可能性がある。2点目としては、IT業界の場合は、ネットの中にもかなり良識的な人がいるはずで、良いレスポンスを返してくれるだろう、という期待を持っているという点です。これは、省内クリアを取る際にも、他局の補佐からも指摘された部分です。3点目にもつながるんですが、ITはスピードが勝負で、技術や業界の移り変わりも激しい分野です。そうなると、Blogを使ってリアルタイムに意見を集める手法が重要になってきます。一般に意見を聞く場合はパブリック・コメントでも行えますが、Blogのようにトラックバックやコメントを使って簡単に意見を言えたり、新しいつながりを構築できたりするツールを使うことで、それ以上の効果をもたらしてくれるのではないかと期待しています。

■谷本
-かなり挑戦的な試みですが、まとめあげるまでにはかなり苦労をされたと思うのですが。

■Blogのねらいと期待
まず、これはお願いに近いかも知れませんが、単なる荒らしや、役所批判にとどまらず、きちんと議論が出来るような、筋の良い意見が出 てくるといいなぁと思っています。もちろん批判するなと言うことではなくて、批判にはきちんと答えていきたいと思いますが、少なくとも生産的な議論が出来るような対話が行われれば有益になると思います。聞き手は、役所だけでなく、そのブログを覗きに来る人全員で、そのコミュニケーションのための題材くらいに考えて頂いても良い。以前、オープンソース政策について経済産業研究所で政策対話をオフラインでやって頂いたこともありましたが、あのミーティングも、その後経済産業省のオープンソース政策をパワーアップさせるための新しい民間とのチャネル作りに大きく貢献したんですね。このような形での、従来審議会等には縁がなかった人も含めて、新しいつながりを作り出す効果についても期待しています。

そう言う意味では、例えば大手企業の現場におられる方々と、大企業のやりとりに苦労をされているベンチャービジネスの方々の反応を是非伺いたい。彼らがきちんとした議論を投げてくれて、討論する中で作られてくる理解をもって、企業の中堅幹部たちを動かしていくきっかけになってくれれば、すごくいいですね。

役所としても、ここ最近は他流試合から逃げるというか、楽をしているというか、耳の痛い話を真剣に聞かなくなってきているのではという危惧もあります。このBlogで得られた意見は、少なくともコンシューマ・リポートや参照モデルの策定にはダイレクトに反映されていくわけですし、その他の部分も、今後のMETIの情報政策の議論をするなかで活用されていくことになります。その意味でも、忌憚のないご意見をいただきたいと考えています。

(以上)

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