中国経済新論:中国の産業と企業

「インターネット金融」をテコにフィンテック大国として浮上する中国
― 課題となるリスクへの対応 ―

関志雄
経済産業研究所

近年、モバイル決済の普及に伴うキャッシュレス化の進行に象徴されるように、中国におけるフィンテックは「インターネット金融」を中心に目覚ましく発展しており、海外から大いに注目されている(注1)。世界的に見ても、中国は、すでにフィンテックの分野において最先端に立っており、またそれを支える革新的企業が輩出されている。

フィンテックの発展は、金融サービスを受けられる対象の拡大と資金配分の効率の向上に寄与している一方で、従来の金融サービスと同じように、経済全体の安定を揺るがしかねないリスクを抱えている。現に2015年以降、P2Pレンディング・プラットフォームを運営する一部の会社が相次いで破綻し、多くの被害者が出た。フィンテックの健全な発展に向けて、監督管理当局は本格的に規制の強化と不正行為の取り締まりに乗り出しており、成果を上げつつある。

フィンテック市場の急拡大とそれを支える新興企業の急成長

中国はフィンテック大国として浮上している。それを牽引しているのは、第三者決済、P2P(Peer to peer)レンディング、クラウドファンディング、ビッグデータに基づく信用評価などによって構成される「インターネット金融」の近年の急速な発展である。中でも、2017年に第三者決済の取引額は143.3兆元(前年比44%増)、同年末のP2Pレンディング残高は1.22兆元(前年比50%増)に達している(注2)。

中国におけるフィンテックの台頭は、その商品とサービスの普及率や、担い手となる企業への国際的評価、そしてこれらの企業による資金調達の規模の国際比較を通じて、一層明らかになる。

まず、アーンスト・アンド・ヤング(EY)の主要20カ国・地域を対象とするフィンテックの普及率に関する調査によると、中国は69%で首位となり、米国(33%、10位)や日本(14%、19位)を大きくリードしている。また、①決済・送金、②フィナンシャル・プランニング、③資産運用・管理、④借り入れ、⑤保険という5つの分野の中で、保険を除く4つの分野において、中国における普及率が最も高い(表1)。

表1 主要国・地域におけるフィンテックの普及率(2017年)
総合ランキング
順位 国・地域 (%)
1 中国 69
2 インド 52
3 英国 42
4 ブラジル 40
5 オーストラリア 37
6 スペイン 37
7 メキシコ 36
8 ドイツ 35
9 南アフリカ 35
10 米国 33
11 香港 32
12 韓国 32
13 スイス 30
14 フランス 27
15 オランダ 27
16 アイルランド 26
17 シンガポール 23
18 カナダ 18
19 日本 14
20 ベルギー、ルクセンブルク 13
分野別ランキング
分野 順位 国・地域 (%)
決済・送金 1 中国 83
2 インド 72
3 ブラジル 60
4 オーストラリア 59
5 英国 57
フィナンシャル・
プランニング
1 中国 22
2 ブラジル 21
3 インド 20
4 米国 15
5 香港 13
資産運用・管理 1 中国 58
2 インド 39
3 ブラジル 29
4 米国 27
5 香港 25
借り入れ 1 中国 46
2 インド 20
3 ブラジル 15
4 米国 13
5 ドイツ 12
保険 1 インド 47
2 英国 43
3 中国 38
4 南アフリカ 32
5 ドイツ 31
(注)総合ランキングはデジタル情報機器利用者の中で「フィンテックの商品・サービスを2つ以上利用している」、各分野のランキングは「1つ以上利用している」回答者の割合。
(出所)EY, "EY FinTech Adoption Index 2017", 2017より筆者作成

また、フィンテックの分野における中国の台頭を象徴するように、KPMGが選んだ世界をリードするフィンテック企業50社の中で、中国企業は米国の13社に次ぐ9社を占めている上、上位3位までを独占している(表2)。首位の螞蟻金服、第2位の衆安保険、第3位の趣店をはじめ、中国を代表するこれらのフィンテック企業は、いずれも2010年代に入ってから設立された民営の新興企業である(表3)。これは、銀行や証券会社など、従来の金融機関の大半が、依然として国有企業によって支配されていることとは対照的である。

表2 KPMG が選んだ世界フィンテック企業のトップ50社(2017年)
順位 会社名 業務分野
1 螞蟻金服 決済 中国
2 衆安保険 保険 中国
3 趣店 レンディング 中国
4 Oscar 保険 米国
5 Avant レンディング 米国
6 陸金所 資本市場 中国
7 Kreditech レンディング ドイツ
8 Atom Bank レンディング 英国
9 京東金融 レンディング 中国
10 Kabbage レンディング 米国
11 SoFi レンディング 米国
12 Nubank 決済 ブラジル
13 Funding Circle レンディング 英国
14 Klarna 決済 スウェーデン
15 Square 決済 米国
16 Xero 会計 ニュージーランド
17 Stripe 決済 米国
18 SecureKey Technologies 規制対応 カナダ
19 solarisBank レンディング ドイツ
20 Adyen 決済 オランダ
21 Affirm レンディング 米国
22 Revolut 決済 英国
23 Clover Health 保険 米国
24 Prospa レンディング オーストラリア
25 OurCrowd クラウドファンディング イスラエル
順位 会社名 業務分野
26 iZettle 決済 スウェーデン
27 51信用卡 レンディング 中国
28 OnDeck レンディング 米国
29 WealthSimple 資産運用 カナダ
30 Circle デジタル通貨 米国
31 点融 レンディング 中国
32 Spotcap レンディング ドイツ
33 Lendingkart レンディング インド
34 Xapo デジタル通貨 スイス
35 Viva Republica 決済 韓国
36 我来貸 レンディング 中国
37 zipMoney 決済 オーストラリア
38 融360 レンディング 中国
39 Future Finance レンディング アイルランド
40 Coinbase デジタル通貨 米国
41 League 保険 カナダ
42 Pushpay 決済 ニュージーランド
43 VertaaEnsin
(Compare EuropeGroup)
保険 ロンドン
44 AfterPay Touch 決済 オーストラリア
45 Lendix レンディング フランス
46 Lending Club レンディング 米国
47 Kueski レンディング メキシコ
48 GuiaBolso レンディング ブラジル
49 iwoca レンディング ロンドン
50 Robinhood ブローカレッジ 米国
(注)順位は各社の①資金調達累計額、②年間資金調達額、③地理・業種上の多様性、④消費者及び市場における牽引力、⑤製品、サービス、ビジネス・モデルのイノベーションの程度に基づく。
(出所)KPMG「2017 Fintech100」(2017年11月15日)より筆者作成
表3 KPMGが選んだ世界フィンテック企業50社にランクインした中国企業(2017年)
順位 会社名 英語名 創立年 本社
所在地
概要
1 螞蟻金服 Ant Financial 2014 杭州 世界最大のモバイル決済サービスであるアリペイに加え、ビッグデータに基づき、個人の信用度を評価するジーマ信用というサービスを提供している。
2 衆安保険 ZhongAn 2013 上海 螞蟻金服、テンセント、平安保険の共同出資で設立した、中国初のインターネット保険(損保)会社であり、2017年に香港メインボードに上場した。
3 趣店 Qudian 2014 北京 主にクレジットカードを持てない大学生や若者を対象に、ローンや分割払いなどの金融サービスを提供している。
6 陸金所 Lufax 2011 上海 平安保険の傘下にある総合フィンテック企業。P2Pレンディング・プラットフォームとしてスタートし、現在提供するサービスは、MMF、投資信託、保険などのオンライン販売にも及んでいる。
9 京東金融 JD Finance 2013 北京 サプライチェーン金融、資産管理、クラウドファンディングなどの企業金融と消費者金融を柱に、中国の農村地域を含む国内外で事業を展開している。
27 51信用卡 51Xingyongka 2012 杭州 クレジットカードの一括管理サービスを提供し、それから得られた個人信用データをベースに、消費者金融を展開している。
31 点融 Dianrong 2012 上海 AIやブロックチェーン技術を用いたP2Pレンディング・プラットフォームを運営している。
36 我来貸 WeLab 2013 深圳
香港
ビッグデータに基づいて借り手のリスクをすばやく分析・評価し、融資を行う。
38 融360 Rong360 2011 北京 金融サービス検索とマーケットプレイスを主業務としている。
(注)順位はKPMG「2017 Fintech100」(2017年11月15日)による。
(出所)各種資料より筆者作成

さらに、2017年の中国のフィンテック企業による資金調達額は796億元に上り、世界全体の57.0%を占め、第2位の米国(258億元、世界全体の18.5%)を大きく上回っている。資金調達の多い順で見ると、世界トップ20の案件のうち、1位の衆安保険、3位の趣店、4位の易鑫集団(いずれもIPOによる資金調達)をはじめ、中国企業は14件を占めている(表4)。

表4 世界フィンテック企業の資金調達トップ20の案件(2017年)
順位 会社名 業務分野 調達額(億元) ステージ(注)
1 衆安保険 中国 保険 97 IPO
2 Paytm インド 決済 91 シリーズD
3 趣店 中国 レンディング、消費者金融 58 IPO
4 易鑫集団 中国 自動車ローン 56 IPO
5 蘇寧金融 中国 綜合金融 53 戦略投資
6 易鑫集団 中国 自動車ローン 32 シリーズC
7 SoFi 米国 レンディング 32 シリーズF
8 優信拍 中国 自動車ローン 32 シリーズD
9 瓜子中古車 中国 消費者金融、自動車ローン 26 シリーズB
10 大搜車 中国 自動車ローン 21 シリーズE
11 捷信中国 中国 消費者金融 20 戦略投資
12 AvidXchange 米国 決済、その他 19 シリーズF
13 拍拍貸 中国 レンディング 19 IPO
14 Transferwise 英国 決済 18 シリーズE
15 団貸ネット 中国 レンディング 18 シリーズD
16 Kabbage 米国 レンディング、ビッグデータ 16 シリーズF
17 湘財証券 中国 証券 15 新三板(店頭市場)
18 我来貸 中国 レンディング 15 戦略投資
19 点融 中国 レンディング 14 シリーズD
20 Affirm 米国 レンディング 13 シリーズE
(注)一般的に、スタートアップ企業の創業から新規株公開(IPO)までの成長過程における資金調達は、シードラウンド(コンセプトを作りプロトタイプを開発しているステージ)、シリーズA(プロトタイプが完成しており、商品・サービス提供が始まった「アーリーステージ」)、シリーズB(商品・サービスが軌道に乗りはじめ、成長するための資金が必要である「成長ステージ」)、シリーズC、D、E・・・(エグジットするために、十分な利益又は売上を出すための資金が必要である「レイターステージ」)の数回にわたって行われる。
(出所)零壹財経・零壹智庫「2017 グローバルフィンテック発展指数(GFI)と投融資年報」(2018年1 月)より筆者作成

巨大な市場と潤沢な資金に支えられ、中国におけるフィンテック産業は急成長し、フィンテック企業全体の2017年の営業収入が2013年の9.4倍に当たる6,541億元に達している(iResearch「2018年中国フィンテック発展現状研究」、2018年2月による推計)。

中国におけるインターネット金融が急速に発展した背景

中国において、インターネット金融を中心にフィンテックが目覚ましく発展してきた背景には、インターネットの発展や、高まる金融包摂(financial inclusion)への関心、政府の後押しといった要因が挙げられる。

まず、インターネットの発展、特にモバイルインターネットの発展は、インターネット金融に優れた技術と有利な市場環境を提供している。2017年末現在の中国のインターネット利用者数は7.72億人で、前年末に比べ4,074万人増加した。インターネット普及率は55.8%に達している。その内、モバイルインターネット利用者数は7.53億人と、インターネット利用者全体に占める割合は97.5%に達している。2017年、中国におけるネット通販(財とサービスの購入を含む)の規模は7.18兆元(1.06兆ドル)に達しており、インターネット利用者の69.1%はネット通販を利用している(中国互聯網情報センター(CNNIC)「第41回 中国インターネット発展状況統計報告」、2018年1月31日)。インターネット産業を牽引してきたアリババ(ネット通販)、テンセント(SNS)、バイドゥ(検索)などの新興企業は、それぞれの既存サービスの利用者を対象に、金融サービスを提供している。

また、金融包摂への関心が高まっており、インターネット金融は、それを実現する有効な手段として注目されている。金融包摂は、社会のすべての人々を対象に全面的金融サービスを低コストで提供することである。しかし、情報の非対称性などを原因に、伝統的金融機関は中小零細企業に提供するサービスが不足しており、ショッピング・ローンなど、消費者の資金需要を満たすこともできていない。インターネット金融は、情報の非対称性を緩和し、コストを抑えながら、資金の貸し手と借り手をうまくマッチングさせることができる。その上、インターネット金融は、新しい分野であるだけに、既存の産業と違って、守るべき既得権益がないゆえに参入障壁が低い。この隙間をとらえて、ベンチャー企業は、金融包摂という未開拓の分野に進出できたのである。

さらに、政府はインターネット金融の発展を奨励している。中国は、労働力不足を背景に成長率が低下している中で、インターネット技術の活用をテコに生産性の向上を目指している。それに向けて、2015年3月に開催された第12期全国人民代表大会第3回会議の「政府活動報告」において、李克強首相は、「『インターネット・プラス』行動計画を策定し、モバイルインターネット、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モノのインターネット(Internet of Things, IoT)などと現代製造業との結合を推進し、電子商取引、工業インターネット、インターネット金融の健全な発展を促進し、インターネット企業を国際市場の開拓・拡大へと導く。」という方針を明らかにした。それを受けて発表された「国務院の『インターネット・プラス』行動を積極的に推進することに関する指導意見」(2015年7月)では、金融包摂は、起業・イノベーション、協同製造、現代型農業、スマートエネルギー、生活者向けサービス、高効率物流、eコマース、利便性の高い交通、グリーン・エコロジー(環境保護)、人工知能(AI)とともに、インターネットと融和して新しい産業モデルを形成し得る重点分野として挙げられ、インターネット金融は、それを実現するカギと位置づけられている。

インターネット金融の役割

インターネット金融、ひいてはフィンテックの発展は、金融サービスを受けられる対象の拡大と資金配分の効率の向上に寄与している。

まず、インターネット金融は、金融包摂の発展を促している。中国の場合、特に、従来の金融機関のサービスが行き届いていない農民、零細企業、低所得者及び奥地に住む人々がその恩恵を受けている。

また、インターネット金融は、インフォーマル金融部門に流れた資金をフォーマル金融部門に誘導している。中国では、家計の貯蓄が巨額に上るが、投資手段とチャネルが限られているため、有効に利用されておらず、その一部は監督管理の届かないインフォーマル金融部門に流れてしまっている。規範化されたP2Pレンディングとクラウドファンディングによって、仲介される資金がより有効に利用され、その安全性も向上するだろう。

さらに、インターネット金融は、コスト削減、生産性と金融サービスの品質の向上に有利である。まず、eコマース、第三者決済、SNSで形成されたビッグデータとデータ分析技術を生かし、取引コストを大幅に削減することができる。次に、多くの支店の開設や大量の職員の雇用も必要ないため、経営コストを低く抑えることができる。そして、従来の銀行業や証券業と異なる資金調達のチャネルを開拓し、どこでも、いつでも、だれでも、金融サービスをワンストップで受けることを可能にした。最後に、インターネット金融の急速な発展や新しい理念は、従来の金融機関にも刺激を与え、その業務と商品・サービスにおけるイノベーションを促している。

インターネット金融の影響は、金融部門にとどまらず、経済全体にも及んでいる。供給の面では、資金配分の効率の向上を反映して、実体経済部門の生産性も上昇する。また、需要の面では、モバイル決済と各種のインターネット貸借の普及は、消費の拡大に寄与している。

インターネット金融が抱えるリスク

インターネット金融、ひいてはフィンテックは、多くのメリットがある反面、警戒すべきリスクも抱えている(中国人民銀行貨幣政策分析グループ『中国区域金融運行報告2017』、2017年8月4日)。

まず、経営ライセンスがないままでの違法経営の事例が散見される。例えば、P2Pレンディング、株式クラウドファンディング分野において、電信業務経営許可証(ICPライセンス)が必要であるが、これを持たずに営業している企業がある。また、一部の第三者決済機関やインターネット資産管理会社などが必要なライセンスを取得しておらず、販売しているファンド商品も中国基金業協会で登録していないなどの例もある。さらに、一部のP2Pレンディング・プラットフォームの運営会社は、無許可で信用仲介を行ったり、プラットフォームを通じて自らの資金を調達したり、貸し手の損失を補填したりするなど、不正行為も少なくない。

また、リスク管理が不十分である。インターネット企業は、金融業へ参入してからまだ日が浅く、経験も不足しているため、金融リスクに対する認識も甘く、対応能力も弱い。それゆえに、主要な融資先が債務不履行に陥った場合、経営破綻する恐れがある。

さらに、インターネット金融の分野は参入しやすいため、無秩序な競争が繰り広げられている。一部の企業は、オンライン経営を離れて移動式のオフライン販売拠点を作ったり、誇張した宣伝を行ったりしている。「インターネット金融」の名のもとで、違法な資金集めや、詐欺行為さえ見られる。これは経済社会の安定を脅かす要因になりかねない。

現に、2015年12月に摘発された「e租宝事件」に象徴されるように、インターネット金融に伴うリスクは一部顕在化している。P2Pレンディング・プラットフォームを運営していたe租宝は、架空の投資話で高利回りを謳い、派手な宣伝活動を通じて2014年7月から15年までの約1年半にかけて全国各地の約90万人の出資者から累計700億元ほど(利払いと元本の返済を除けば500億元ほど)を集めた(新華社「e租宝の違法な資金集めの真相に関する調査」2016年1月31日)。新規の出資者の資金を既存の出資者への利払いと元本の返済に充てるという手法が採られ、それはまさにポンジ・スキーム(Ponzi scheme)そのものである(注3)。当局による摘発をきっかけに、e租宝は破綻し、被害を被った出資者は、資金の返還を求めて、北京市など各地でデモを行った。また、他のP2Pレンディング・プラットフォームの破綻も相次いだ。

強化されたインターネット金融に対する監督管理

インターネット金融、ひいてはフィンテックのリスクを抑えながら、そのメリットを最大限に生かすためには、当局による監督管理の強化が不可欠である。それに向けて、2015年7月、中国人民銀行など10の関連部門は共同で「インターネット金融の健全な発展を促進することに関する指導意見」を発表した。その中で、インターネット金融の各分野に関する監督管理の責任分担が明確化された。具体的に、中国人民銀行は第三者決済、中国銀行業監督管理委員会はP2Pレンディングをはじめとするインターネット貸借、インターネット信託とインターネット消費者金融、中国証券監督管理委員会はエクイティ型クラウドファンディングとインターネット上のファンドの販売、中国保険監督管理委員会はインターネット保険に対し、それぞれ監督管理の責務を果たす。

これを受けて、2016年4月、監督管理当局は、本格的にインターネット金融の健全化に向けた取り組みに乗り出し、主に、①P2Pレンディングとエクイティ型クラウドファンディング業務、②インターネット上で行われる資産管理と業種の垣根を越えた金融業務、③第三者決済業務、④インターネット金融の分野の広告を対象に取り締まりを強化した。その後、「インターネット貸借の情報仲介機関の業務活動の管理暫定弁法」、「決済機関の顧客の預かり金の集中保存管理を実施することに関する事項の通知」などの政策が発表された。これらの政策の実施により、インターネット金融の規範化が進み、透明性も高まった。

今後、AIなど、新しい技術による金融イノベーションが加速することにより、今まで想定していないリスクも現れかねない。この新しい環境にも対応できるように、監督管理当局は最新の知識や技術への対応と潜在リスクの判断能力の向上とともに、顧客資金の第三者預託や、金融機関の情報開示、消費者権利の保護、情報セキュリティにかかわる制度の強化と、マネー・ロンダリングと金融犯罪の防止に努めなければならない。

脚注
  1. ^ ここでいうフィンテック(FinTech, Financial Technology)とは、「金融市場や金融機関、金融サービスの提供に実質的な影響を与える新しいビジネス・モデル、応用、プロセス、商品を生み出すような技術主導の金融イノベーション」である(Financial Stability Board, "Financial Stability Implications from FinTech," June 27, 2017)。また、インターネット金融とは、「従来の金融機関やインターネット企業がインターネット技術や情報通信技術を利用して、資金融通、決済、投資と情報仲介サービスを実現させる新しい金融ビジネス・モデルである」(中国人民銀行など10の関連部門が共同で発表した「インターネット金融の健全な発展を促進することに関する指導意見」、2015年7月)。
  2. ^ 第三者決済の規模は中国人民銀行、「2017年決済システム運行の総体状況」(2018年3月5日)、P2Pレンディングの残高は網貸之家、「2017年P2Pレンディング業年報」(2018年1月)による。
  3. ^ ポンジ・スキームとは、出資してもらった資金を運用し、その利益を出資者に(配当金などとして)還元するなどと謳っておきながら、実際には資金運用を行わず、後から参加させる別の出資者から新たに集めた資金を、以前からの出資者に配当金と元本の償還金などと偽って渡したり、経営者が横領したりする仕組みである。ポンジ・スキームを使って資金を集めることは、法律に違反する一種の詐欺に当たる。このようなスキームは、「自転車操業」にたとえられ、新たに入ってくる資金の量が配当金と元本の償還金を賄えなくなる段階になると、破綻が避けられない。
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2018年4月12日掲載