Special Report

Towards an Asia-Pacific Digital Economy Governance Regime
アジア太平洋のデジタル経済ガバナンスの確立に向けて

ARMSTRONG, Shiro
客員研究員

Rebecca Fatima STA MARIA
APEC事務局局長

渡辺 哲也
副所長

コロナは、医療、教育、サービスなど経済のデジタル化を加速させた。イノベーションと技術進歩が世界中で拡散する中で、デジタル保護貿易主義が高まっており、デジタル経済を統治するための多国間ルールが求められている。中国と米国の戦略的競争が示すように、現状はデジタルデカップリングが世界経済に分断を起こしている。

こうした状況を受け、3月23日にRIETIは、ANU(オーストラリア国立大学)と共同で、シンポジウム「アジア太平洋デジタルガバナンスに向けて」を開催した。本シンポジウムでは、米中日豪星などアジア太平洋の有識者が一堂に会し、アジア太平洋デジタルガバナンスに向けて議論を行った。

同シンポジウムの議論を受け、日豪星の有識者が共同で政策提言「アジア太平洋のデジタル経済ガバナンスの確立に向けて」を発表した。本提言では、アジア太平洋のデジタル経済ガバナンスを構築するうえで、デジタル保護貿易を避ける高いレベルの多国間ルールが重要であること、ルールは従来の貿易問題だけでなく「信頼できるデータアクセス」「プライバシーとセキュリティの保護」「競争政策」および「AIやフィンテックなどの新しい技術の統治規範」などの問題を網羅する必要があること、そして日本やオーストラリアなどのミドルパワーやAPECがこれらの問題解決に向けたリードをすべきこと、などさまざまなイニシアチブを示している。

本提言は、シロー・アームストロング(オーストラリア国立大学准教授、経済産業研究所ヴィジティングスカラー)、レベッカ・スタ・マリア(APEC事務局局長)、渡辺哲也(経済産業研究所副所長)が共同執筆した。

また、ウェンディ・カトラー(アジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)ワシントンDC事務所ヴァイスプレジデント兼マネージングディレクター)、デボラ・エルムズ(アジア貿易センター創設者兼エグゼクティブディレクター)、黄益平(北京大学国家発展研究院教授 / デジタルファイナンス研究センター長)ビラハリ・カウシカン(シンガポール国立大学中東研究所長 / 元シンガポール外務次官)、ピーター・ラブロック(TRPC社ディレクター)、ジョシュア・ポール・メルツァー(ブルッキングス研究所シニアフェロー)が提言に貢献した。

2021年4月26日掲載