青木昌彦先生追悼コラム

青木先生への追伸

伊藤 秀史
ファカルティフェロー

先日昔のことを追悼記事として書きました(日経ビジネスONLINE「『革新的な組み合わせ』を創り続けた先駆者、青木昌彦氏を悼む」)。読んでいただくことを想定して書いていないのでお恥ずかしい限りですが、企業理論の研究者としての青木先生について、全力で書いたつもりです。

そこにも書きましたが、浅沼萬里さん、ジョン・マクミランとは再会されましたか。そちらの制度分析の方が充実してしまうようなことになるとちょっと困るのですが。

青木先生には1985年の留学時代に出会い、それ以来、研究者として走り出した頃を通してものすごくお世話になりました。でも、青木先生は僕以上のスピードで走っていました。企業や組織の理論からどんどん拡大して、制度の一般理論を追究しているかのようで、企業組織にしか学術的興味のない僕にはついて行けませんでした。

だからこそ、青木先生がRIETI所長の時代に、RIETI経済政策分析シリーズ日本企業変革期の選択』を出版できたことは、本当にうれしかったです。このプロジェクトの機会をいただいたこと、所長としてお忙しい中、よく研究会に出席してくださったこと、所長インタビューで「思い入れがある」RIETIの本としてあげてくださったこと、改めて感謝します。本当にありがとうございました。

青木先生の1986年のAER論文は、組織の経済学の分野でも改めて高く評価されています。僕も、関連分野での研究を始めています。さらに、青木先生の株主と労働者による経営者の統治の研究も、企業統治の分野で再評価される日が来るのでないかと考えています。比較制度分析は僕には分野が大きすぎるのですが、企業理論、組織の経済学といった自分の狭い専門分野で地道に研究を続けていくことで、先駆者としての青木先生の研究を伝え続けていく決意を新たにしています。見守っていてください。

2015年7月29日掲載

2015年7月29日掲載

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