政策評価のための横断面前後差分析(DID)において系列相関及び処置の二次的影響の両方の可能性がある場合での新たな対策手法について

執筆者 戒能 一成 (研究員)
発行日/NO. 2019年11月  19-J-065
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概要

政策評価で多用される手法である横断面前後差分析(DID)については、確認が必要な前提条件やその対策が必ずしも明確に整理・整備されておらず、特に系列相関や処置の二次的影響の問題に対策を講じない場合、評価結果に偏差を生じることが懸念される。

本稿においては、経済学・社会学などの分野での主要先行研究からDIDにおいて処置・対照群の同時存在性、結果指標と処置の独立性、系列相関及び処置の二次的影響の不存在性の4つの主要な前提条件の確認が必要であることを帰納的に示し、ランダム化を用いた実験的方法、マッチング又は合成対照群を用いた統計的方法の3つの主要方法論別に適用できる既存の対策手法などを整理した。

当該整理を基礎に特に対策手法などが十分でない統計的方法において、系列相関及び処置の二次的影響の両方に起因した問題を生じる場合でも適用できる新たな対策手法を開発した。当該対策手法では二次的影響の影響元不識別などの前提条件の下で、対照群の対象毎に前後差(BAI)と横断面前後差(DIDI)の比をDIDIの逆数で回帰分析した際の定数項の有意性を確認することなどにより、両方の問題に対応できることを示した。

具体的に当該手法を用い系列相関及び処置の二次的影響の両方の可能性がある東日本大震災・福島第一事故前後での福島県産米価格について、当該震災・事故を処置と見なした実証分析を試みた。併せてDIDにおける4つの主要な前提条件別に対策を講じなかった場合に生じる偏差の内訳を推計し、当該事例では処置の二次的影響の問題が最大の偏差を生じ得ることを示した。