| 執筆者 | 小宮山 涼一(東京大学) |
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| 研究プロジェクト | 電力市場のシステム・デザインとわが国への示唆 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
産業経済プログラム(第六期:2024〜2028年度)
「電力市場のシステム・デザインとわが国への示唆」プロジェクト
本研究では、エネルギー資源の供給から最終需要までを含む日本のエネルギーシステム全体を対象とし、年間8,760時間の高時間解像度での電力需給を統合した最適化型モデルを用いて、一定の技術並びに経済的条件を仮定したシミュレーションにより、2050年までの脱炭素化に伴う日本のエネルギー需給構造を分析した。本分析は、将来像の予測や実証ではなく、想定した条件下で、経済合理的な観点から、脱炭素化を進めた場合に、どのようなエネルギー需給構造がありえるのか、数理モデルにより試算したものである。2050年のCO₂排出量上限について、2013年度比70%、80%、90%削減、ネットゼロの4ケースを設定した。原子力は60年運転を前提とした(2050年の設備容量は約2,370万kW)。
第一に、設定した条件下では、2050年には現在の水準を大幅に上回る再生可能エネルギーの導入がみられた。2050年の太陽光発電導入量は4.6~10.8億kW、陸上風力は300万~7,500万kW、洋上風力は0~1.6億kWとなり、CO₂制約が厳しくなるほど導入量が増加する。特に太陽光発電は、2020~2025年の実績が年間平均約400万kWの導入であったのに対し、本分析では2025年以降2050年まで年間平均2,100~4,600万kWの導入が必要となる結果となった(図1)。これは、脱炭素化を一層強化する場合、現在の導入ペースを大きく上回る導入の継続が必要との示唆が得られた。
第二に、脱炭素化の強化に伴い、追加的なCO₂削減に伴う経済的負担は大きくなる結果となった。2050年のCO₂限界削減費用は、70%削減の場合で約3万円/t-CO₂、ネットゼロでは約10万円/t-CO₂まで上昇する(図2)。排出削減が進むほど、より高コストな技術が必要となりうることを示唆し、技術革新等によるコスト低減が重要となる。また、もし低コストで安定的に調達できる条件が整えば、海外産水素等の活用もコスト抑制の選択肢となりうる。
第三に、脱炭素化は電力需要を大幅に増加させる可能性がある。現在の電力需要は約9千億kWhであるが、本分析では、2050年の電力需要は約1.3~2.1兆kWhとなり、ネットゼロケースでは約2兆kWhに達するポテンシャルが推定される(図3)。運輸・産業部門等の直接的な電化や、水素製造等に大量の電力が必要となる。ネットゼロケースでは、水素製造の電力消費だけで約4,500億kWhに達する(現在の日本の電力需要の約半分)。脱炭素化に伴う電力需要増加のポテンシャルは大きく、それに見合う供給力確保が重要になることを示唆している。
以上の結果は、将来のエネルギー需給の予測ではなく、一定の前提条件下で得られたシミュレーション結果である。そのため、実際の2050年のエネルギー需給構造は、技術コスト、エネルギー価格、経済動向、技術革新、国際情勢、政策等により大きく変化しうる点に留意が必要である。一方、本分析は、脱炭素化を大幅に進める場合に想定される再生可能エネルギー導入量、CO₂限界削減費用、電力需要増加の規模等を定量的に示すことで、今後のエネルギー政策や関連する制度を検討する際の一つの材料を提供するものである。
※本稿の分析内容の詳細については、DP本文を参照されたい。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものである。