| 執筆者 | 河辺 賢一(東京科学大学)/横山 明彦(ファカルティフェロー) |
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| 研究プロジェクト | 電力市場のシステム・デザインとわが国への示唆 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
産業経済プログラム(第六期:2024〜2028年度)
「電力市場のシステム・デザインとわが国への示唆」プロジェクト
問題の所在
太陽光・風力発電の出力は天候によって変動するため、電力システムでは、予測が外れた場合に発電・蓄電設備の出力を増減できる余力(予備力)をあらかじめ確保している。予備力は、系統全体の量が足りているだけでなく、必要な場所へ送電線を通じて届けられることが重要である。
しかしながら、前日段階の計画では送電上の問題がなくても、その後に再エネ出力の予測値が変化し、予備力を発動すると、送電線を流れる電力が変化して、送電線混雑(送電線を流れる電力が熱的限界を超えた状態を表し、本稿では過負荷と呼ぶ)が生じる場合がある。典型的には、送電線の下流側で再エネ出力が予測を下回り、下流側の予備力だけでは不足を補えないときに、上流側の発電機を増出力すると送電線を流れる電力がさらに増える。このため、予備力の有効性は、確保量だけでなく、予備力を確保している発電機の接続地点にも左右される。
分析の方法と主な結果
本稿では、再エネ出力が予測値から外れる多数のケースを作成し、それぞれについて発電機の出力変更や再エネの出力抑制を行っても送電線過負荷を回避できないかを計算した。これにより、過負荷が生じやすい送電線と時間帯を、確率により定量的に示すことができる。
標準的な電力系統モデルを用いたある時刻に対する数値例では、送電線14–16の過負荷発生確率は、元の計画で82.7%であった。このとき、上流側の発電機を追加しても84.7%に上昇した一方、下流側の発電機を追加すると29.6%に低下した。予備力を追加する地点によって、過負荷リスクへの効果が大きく異なることを示している。
政策的含意
今後、再エネ導入下の電力システムにおいて予備力を調達する際には、予備力の地点性を考慮することが重要である。例えば、本稿で紹介した評価手法を用いて送電線別・時間帯別に過負荷リスクを評価し、リスクが高い場合には、必要な地点で発電機を追加並列し、予備力を追加調達することが考えられる。その際には、候補となる地点と調達量ごとに、リスク低減効果と費用を比較することが望ましい。
また、前日から実需給1時間前のゲートクローズまで、再エネ予測の更新に応じて過負荷リスクを再評価し、必要に応じて発電機の起動停止計画を見直す必要がある。ただし、火力発電機の起動には時間を要するため、予測精度の向上を待ちすぎると追加起動が間に合わない可能性がある。このため、計画を見直す時点と条件をあらかじめ定めておくことが求められる。
さらに、予備力の調達内容を判断するための基準と役割分担を明確にする必要がある。判断に当たっては、過負荷確率に加えて、供給支障電力量や停電コストの期待値等の指標の活用も視野にいれ、許容するリスク水準を制度上明確にすることが望ましい。その上で、基準を定める主体、個々の計画において調達内容を判断する主体、判断結果を検証する主体を区別する必要がある。
これらの取組を実現するためには、データと計算環境の整備も欠かせない。再エネ出力と需要の予測値・実績値を地点別に蓄積し、地点間および時間間の相関を評価に反映できるようにする必要がある。また、発電機の起動判断期限までに評価を終えられるよう、機械学習や並列計算を活用した計算の高速化も求められる。