ノンテクニカルサマリー

東京都への人口移動と合計特殊出生率について

執筆者 山岸 圭輔(コンサルティングフェロー)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

本稿では、東京都の合計特殊出生率(以下「TFR」という。)が低いことと、東京都への転入超過、特に若者の転入超過が多いことを関連付け、これが日本全体のTFRが低くなっていることの大きな要因であるかのように指摘する意見(いわゆる「東京ブラックホール論」)に対し、実際の都道府県別データを見ながら、批判的に分析した。

まず、TFRの計算式を示したうえで、自ら都道府県別のTFRを推計すると、東京都においては、他県と比べ20歳代の出生率が著しく低い。また、東京都の出生率が低い要因は、有配偶率が低いことが原因であるとの指摘がされることがあり、その際に有配偶出生率が用いられることを踏まえ、当該有配偶出生率の欠点を指摘するとともに、都道府県別のコーホートTFR(以下C-TFR)及び有配偶女性一人当たり出生数を計算し、東京都においては有配偶率だけでなく、有配偶女性一人当たり出生数も、47都道府県で最も低い。

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続いて、年齢段階別の出生率について、都道府県別でパターン分類を行った。東京都は他のいずれの道府県とも異なり、20歳代から30歳代前半の出生率が低く、30歳代後半及び40歳代における出生率が高い。年齢段階別の有配偶率について、東京都で低いのは、小中高卒及び短大高専卒であり、大学大学院卒については他道府県とそれほど変わらない。

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更に、東京都のTFRが全国のTFRに与える影響を見るため、直近年である2024年を対象として、①東京都を除いた我が国のTFR、②東京都のTFRが全国平均のTFRである1.15となった場合の我が国のTFR、③東京都のTFRが人口置換水準である2.07となった場合の我が国のTFRをそれぞれ試算すると、いずれの場合においてもわずかな変化しかない。
(2024年のTFRは1.15であるが、①は1.18、②は1.17、③は1.30となった。)

近年の東京への転入超過の増加は、高学歴女性が増えているためとの分析もある中、東京都においては高学歴女性の有配偶率は全国平均と比べて低くないことから、東京都への若年層の転入超過が東京都のTFRの低下の要因でない可能性が示唆される。また、例え東京都のTFRが全国平均と比べて低いとしても、その影響はごくわずかである。

なお、1970年代後半生まれ以降では、全国的にC-TFRの下落傾向が止まっており、東京都においては上昇幅が大きくなっている。また、44歳時点の女性の有配偶率と有配偶者の平均出生数の都道府県別推移を見ると、東京都において1976年生まれ世代の女性の有配偶率が、1966、71年生まれ世代よりも高くなっている。

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さらに、1966-70年生まれ世代と1976-80年生まれ世代の40-44歳時点の女性の有配偶率の差をみると、東京都における大学・大学院卒の有配偶率が最も上昇している。

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当該点については、地域及び学歴が異なると、就業先の産業や規模に違いがあるとともに、企業の産業及び規模によって女性労働者に対するサポートの手厚さに違いがあることが、結果として、東京都における大学・大学院卒女性の有配偶率の上昇に影響した可能性もある。