ノンテクニカルサマリー

新型コロナウイルスショックの労働市場に与える異質的な影響:人々の行動と非薬学的介入

執筆者 星 紀翔 (ブリティッシュコロンビア大学)/笠原 博幸 (ブリティッシュコロンビア大学)/牧岡 亮 (研究員(政策エコノミスト))/鈴木 通雄 (内閣府経済社会総合研究所 / 東北大学)/田中 聡史 (クイーンズランド大学)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

本稿は、新型コロナウイルス感染症に関する政策による人々の行動抑制が、日本の労働市場に与えた影響の異質性を分析した。労働市場における個人のアウトカムに関する変数を都道府県レベルの人々のモビリティ指数に回帰し、さらに都道府県ごとの政策指標をモビリティ指数に対する操作変数として用いた分析によると、以下の5つの結果が得られた。

1.新型コロナウイルス感染症による人々の行動抑制により、休業者数が全ての属性において増加したが、その影響は特に非正規労働者、低学歴者、女性、31歳から45歳の中年者で大きいことが分かった。

2.労働時間はほとんど全ての属性において減少しているが、その減少の程度は特に雇い人のいない自営業主や31歳から45歳の中年者において特に大きいことが分かった。

3.失業に関しては、前年に正規職従事していた老年男性において、統計的に有意な負の影響を観察した。この影響は特に60歳と65歳において大きいことが観察されており(図1)、新型コロナウイルス感染症により再雇用の機会が失われたことによると解釈できる。

図1:行動変容の失業に対する影響(55歳から70歳)
図1:行動変容の失業に対する影響(55歳から70歳)

4.1~3の影響は特にサービス職や販売職に従事する労働者に大きいことが分かった。

5.より厳しい政策に関する反実仮想実験を行ったところ、人々の行動抑制により労働者の労働時間が減少することを通じて、平均的労働者の収入が週3,857円減少する一方で、サービス職や販売職に従事する31歳から45歳の労働者の収入は、週13,842円減少することが分かった。