ノンテクニカルサマリー

中国のGDP成長パフォーマンスの再評価:過小評価された価格効果に関する探索

執筆者 伍 曉鷹 (北京大学国家発展研究院 / 一橋大学経済研究所)/李 展 (北京大学国家発展研究院)
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業・企業生産性向上プログラム(第四期:2016〜2019年度)
「東アジア産業生産性」プロジェクト

世界が中国の実際の成長パフォーマンスを誤解する危険があることに異議を唱える人はほとんどいないが、それにもかかわらず、長い間議論されてきた中国のGDPデータの問題は未解決のままである。これは、関係国の政府の政策決定だけでなく、ビジネス全体の障害となっている。物理的指標を使用した研究では、研究者と政府の統計学者の間で生産的な議論を行うための理論に基づく共通の基盤を作ることはできない。本研究では、代替指標を探求する代わりに、中国の公式名目GDP統計をありのままに受け入れる一方、国民経済計算の重要な構成要素であるものの中国の統計では問題が多いと考えられるデフレーターについて詳しく検討することにより実質GDP成長率の再推計を試みる。国民経済計算を再構築し、時系列で価格指数を一致させることにより、この問題に対処する国民経済計算ベースのアプローチを提案する。時系列で再構築された中国の国民経済産業連関表に基づいて、公式の成長推計を大幅に歪めた可能性のある2つの主要なバイアス、つまり、投入価格と産出価格の不一致によって引き起こされるシングルデフレーションによるバイアスと、不変価格の値の集計によって引き起こされる集計バイアス、を考慮して分析を行った。その結果、時間を通じで極めて滑らかな動きをする公式の経済成長率と比較して、外的ショックによる経済へのより大きなショックと実質GDP成長率の激しい変動が明らかになった。次の図で示すように、代替のデフレーター、デフレーション、集計方法を調整すると、公式の経済成長率が年間9.5%から8.3%に低下するだけでなく、成長率のボラティリティが大幅に明らかになった。したがって、大幅に平滑化された公式の経済成長率よりもはるかに有用な情報を提供する。さらに、1.2%ポイントの下方修正は、2018年まで過去40年間を累計した中国の実質所得が公式データによって示唆されたものより36%小さくなることも意味する。

中国のGDP成長率:代案対公式(年間パーセント)
図 中国のGDP成長率:代案対公式(年間パーセント)