ノンテクニカルサマリー

処置の安定性条件に問題がある場合での合成対照群を用いた処置効果評価手法の開発

執筆者 戒能 一成 (研究員)
ダウンロード/関連リンク

このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

本研究では処置群から対照群の対象に処置の二次的影響が及んでいた可能性があるが、実験が困難で限られた統計的試料しか得られない場合でも適用できる、新たな処置効果評価の手法を開発した。
最初に先行研究の分析により処置効果評価で確認すべき前提条件が4つに整理されることを明らかにし、このうち処置の二次的影響の問題への対策手法が実験的試料を用いたもの以外は過去に存在しないことを示す。その上で対照群の対象に及んでいた処置の二次的影響の識別のため、更に4つの前提条件が必要であることを明らかにする。
これらの前提条件の下で独立な3つの乱数の組を多数用意し、処置後に同じ乱数を乗じた前後差や DID の回帰分析を繰返して係数の平均を求めることにより、従来の合成対照群を用いた DID に含まれる処置の二次的影響による偏差が検出でき、偏差を補正した処置効果が推計できることを示す。この手法についてモンテカルロ・シミュレーションを行い、結果を検証し精度を確認した。また対応する実施手順や偽薬試験の手法を整備した。
更にこの手法を用いて東日本大震災・福島第一原子力発電所事故による米の卸取引価格への影響について実証分析を行い、その実用性を確認した。