執筆者 | 戒能 一成 (研究員) |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)
2016年度から開始された電力システム改革により発電及び小売部門の全面自由化が一巡し、電力関連の政策議論は従来の電力需給に加えて調整力需給の市場創設や運用監視、更には2020年に予定される法的分離後も規制事業として残される送変配電部門での経済厚生の確保・拡大の問題へとその焦点が変遷していくものと考えられる。
本稿においては上記政策議論の変化に対応すべく、2016年に開発した電力システム改革政策評価モデルを基礎として、電力需要や再生可能エネルギー発電及び発電機の事故・故障などによる変動の規模と発生確率を実績値に基づいて地域別・時間帯別に推計し、電力に加えて調整力の需要量・均衡価格の推計が可能な確率モデルへ機能を強化した。更に今後の送変電部門に関する政策議論に向けて、都道府県別の電力需要と発電設備の所在地に関する情報を用い地域別の電力・調整力需給の推計結果を地域内送電による都道府県間需給に変換し地点別限界費用を推計すべく機能を拡張した。
具体的に2016年度から2018年度迄の「でんき予報」など各種公開情報による実績値を用いて九州地域における時間帯別の電力・調整力需給を推計し、これを地域内送電による九州7県間需給に変換するとともに、電力・調整力需給における潜在的な問題点の検討、地点別限界費用の推計及び送電線の新設影響評価などを試行し当該機能強化・拡張後のモデルによる推計・評価の有効性を実証した。
今後当該モデルの試算対象の全国47都道府県への拡大など更なる機能強化・拡張を進め、実用的な電力関連の政策評価への応用・展開を図ることが期待される。