ノンテクニカルサマリー

男女の不平等の比較;日本と韓国における職業分離

執筆者 YOUM Yoosik (客員研究員)/山口 一男 (客員研究員)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

本研究では、日本と韓国における男女の職業分離について分析した。男女の職業分離は女性が低賃金の職業に集中する傾向を意味し、それは労働市場における男女の不平等の一要因と考えられている。一般に男女の職業分離の程度は韓国に比べ日本の方が相対的に大きい。表1では男女の職業分離は、分結指数(Index of Dissimilarity)によって計測されている。分結指数は、男性(女性)の分布を女性(男性)の分布に合わせるために職業を変える必要のある最小の女性(男性)割合を示し、日本の分結指数は韓国より大きい。例えばタイプ1型の専門職は医者や歯科医を含む給与の高い専門職で、米国においては有業女性の12.7%がこのタイプ1型専門職に就いているが、韓国では6.2%と約半分となり、日本においてはわずかに1.8%に縮小している。

男女の賃金格差を性別、職業別にみると、日本と韓国のさらなる差異が判明する。日韓両国ともに、女性は2重の不利益を被っているのだが、各不利益の程度が日韓で異なるのである。韓国女性に比べ、日本の女性は男女の職業分離により、すなわち、女性が賃金の低い職業に集中し、賃金の高い職業女性が過少であることにより、大きな不利益を被っている。つまり職業分布の違いによる男女賃金格差が大きい。韓国女性も職業分布の違いによる格差はあるが、それ以上に韓国女性の場合は同種の職業内での男女賃金格差、つまり職業内男女格差、が日本に比べより大きく、それにより大きな不利益を被っている。

本稿は男女の人的資本の違いや雇用形態(正規雇用か否か)が男女の大きな職業分離を説明するか否かについて、いわゆる「反事実的統計分析」(現実と異なる仮想状況をデータ上統計的に作り出して結果を調べる分析)をさらに行った。女性の学歴、年齢、勤続年数および雇用形態が男性と同じになる仮想状況では、男女の職業分離度は減少せず、日韓共にむしろ増大するという結果を得た。この結果は学歴や勤続年数などの人的資本が男女で平等になっても、職業分離は変わらないことを示す。またこの事実は、日韓共に、主に雇用主による女性にとって不利な採用・職業配置の慣行が男女の職業分離の背後にあることを示唆する。

従って、男女賃金格差に現状を改善するには、両国とも政府による企業の慣行に関するガイドラインや規制が必要ではないかと考える。また韓国においては、各職業内での男女賃金格差を減少させる政策がより有効であり、一方日本においては採用や職業配置に関して、性別により違える慣行を辞めさせるためのガイドラインや法がより有効と考えられる。

表1:男女の職業分離:日本、米国、韓国
表1:男女の職業分離:日本、米国、韓国
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