執筆者 | 武智 一貴 (法政大学) |
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研究プロジェクト | オフショアリングの分析 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
貿易投資プログラム(第四期:2016〜2019年度)
「オフショアリングの分析」プロジェクト
本研究は2001年に日本が中国から輸入されるねぎ等に対して発動したセーフガードの効果を分析したものである。日本による数少ないセーフガード発動例であり、その検証は重要な政策的課題である。具体的には、日本のねぎの卸売市場の日次取引データを用いて、セーフガードにより輸入財、国内財の価格やマージンがどう変化したかを明らかにした。セーフガードは輸入の急激な増加により国内産業が損害を受けたため、一時的に輸入を制限し国内産業の構造変化を促すものである。本研究では、セーフガード発動期間における価格とマージン、そして長期的な影響を検証するためにセーフガード終了後5年後のマージンについても推定を行った。
2000年に中国からの農作物の輸入の増加に伴い、日本政府は暫定セーフガードの調査を開始した。調査後2001年4月から暫定セーフガードが生しいたけ、ねぎ、畳表に対して発動され、200日間後の11月8日まで関税割当(一定量までは通常の関税、それを超える量については高関税)が課された。本研究ではまずdifference-in-difference推定により、輸入財価格がセーフガードにより上昇したことを明らかにした。
国内産業の利潤に影響を与えたか検証するために、本研究ではマージンの推定も行った。需要関数の推定から価格弾力性を計測し、独占的競争市場を想定して輸入財と国内財のマージンを測定した結果、輸入財はセーフガード期間においてマージンが低下したことが明らかになった一方、国内財のマージンについては統計的に有意な変化がなかった(下図参照)。また、長期的な影響の検証のためにセーフガード措置終了して5年後のマージンを推定したところ、国内財のマージンに大きな変化がなかったことが明らかになった。結果として、セーフガードは輸入財部門(開発輸入に関わる仲介業も含む)を悪化させるが、国内産業に対しても便益があったとは言えない事が示唆される。