このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
産業・企業生産性向上プログラム(第四期:2016〜2019年度)
「東アジア産業生産性」プロジェクト
日本の社長は高齢化している。図1は、東京商工リサーチ(TSR)データによる社長の年齢分布である(注1)。2006年には59歳であった社長年齢のピークが、2015年には66-67歳に上がっている。これは、人口の高齢化を色濃く反映している。戦後のベビーブーマーが、人口の年齢分布上のピークであると同時に、社長年齢のピークにもなっている(図2参照)。村上・児玉・樋口(2017)によると、2015年から10年間で企業数は20%も減少する(注2)。企業数の減少もさることながら、社長の高齢化に伴う企業活力の低下、ひいては、日本経済停滞も懸念される。米国でも、近年の米国経済の停滞が人口動態の影響を受けているといった研究がなされている(Acemoglu and Restrepo: 2017, Engbom: 2017)。
われわれは社長の属性と企業業績の関係性を分析した。企業の産業、年齢、場所、同族企業か否かといった企業属性をコントロールしてもなお、社長の年齢と企業業績(売上高、雇用者数、1人当たり売上高)レベルの関係は逆U字型である。つまり、同じ財・サービスを提供し、企業の創業年も同じで、同じ地域にある企業であっても、企業業績は、40歳代の社長の企業で最も高く、成長率は加齢にしたがって下がっていく(図3参照)。また、男性、高学歴、出身地が事業を行っている場所と違う社長の企業で、企業業績(レベル、伸び率)は、より高い。仮に、社長の属性に対する企業業績の決定メカニズム(係数)が維持されたまま、人口動態が変化していくとすると、われわれの結果は、今後、予想される人口動態の変化―高齢化、女性の社会進出は益々進むと同時に、高学歴化、都市への人口流入が緩和すること―が企業業績を通して、経済成長に負の影響を与える可能性を示唆する。
- 脚注
- 参考文献
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- Acemoglu, Daron and Pascual Restrepo, "Secular stagnation? The effect of aging on economic growth in the age of automation," American Economic Review, 2017, 107(5), 174-79.
- Engbom, Niklas, "Firm and worker dynamics in an aging labor market," Technical report, Working paper 2017.
- 村上義昭・児玉直美・樋口美雄 (2017), 「地域別企業数の将来推計」, フィナンシャル・レビュー:特集「人口減少と地方経済」, 平成29年第3号(通巻第131号)2017年6月, pp.71-96.