執筆者 | 祝迫 得夫 (一橋大学)/中田 勇人 (明星大学) |
---|---|
研究プロジェクト | 為替レートと国際通貨 |
ダウンロード/関連リンク |
このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
国際マクロプログラム (第三期:2011〜2015年度)
「為替レートと国際通貨」プロジェクト
本稿では、原油価格変動の背後にある外生的な構造ショックが、各国の為替レートと産出量・輸出に与える影響の相対的な重要性について、定量的な評価を行っている。我々は、エネルギー輸出国・輸入国それぞれの為替レート・マクロ変数に対する石油価格の影響に関心があり、したがってオーストラリア、カナダ、ノルウェー、英国(原油産出国ないしはエネルギー輸出国)と日本(エネルギー輸入国)を主な分析対象国とした。また構造ショックとしては、(i)石油供給ショック、(ii)原油に対する世界的な需要ショック、(iii)需給要因と関係のない原油価格の変動、および(iv)上記のどのショックとも関係していない「純粋な」為替レート・ショック、という4つのショックの存在を仮定している。
分析の結果、原油価格変動に関係する(i)-(iii)の構造ショックに対する、各国通貨の異なる反応によって、各通貨の為替レート間の相関構造のかなりの部分が説明されることがわかった(表1、2、3)。その一方で、為替レートのボラティリティの主要な源泉は、(iv)の純粋な為替レート・ショックであることもわかった(表4)。また、オーストラリアと日本を例として、マクロ変数に対する構造ショックの影響を検証したところ、世界的な需要ショックと需給と関係のない石油価格変動が、両国のGDPと輸出の成長率に強い影響を持っている一方で、純粋な為替レート・ショックが日本のマクロ経済変数に与える影響は、かなり限定的であることがわかった。
本論文の分析の重要なインプリケーションとして、第1に、為替レートが我が国の輸出や景気に与える影響は過大評価されている可能性が高く、実は為替レート変動の背後にある構造ショックが、直接の輸出や景気に影響を与えている部分が少なからずあることが示唆される。第2に、本論文のVARの枠組みに限った結論ではあるが、表4から見て取れるように、円の為替レート変動は構造ショックで説明できる部分が、他の通貨と比べて相対的に大きいことがわかる。
カナダ | 日本 | ノルウェー | イギリス | Euro(19カ国) | |
---|---|---|---|---|---|
オーストラリア | 0.786 | -0.728 | 0.651 | 0.060 | 0.159 |
カナダ | -0.488 | 0.664 | -0.142 | 0.368 | |
日本 | -0.452 | -0.298 | -0.016 | ||
ノルウェー | 0.005 | 0.117 | |||
イギリス | -0.602 |
オーストラリア | カナダ | 日本 | ノルウェー | イギリス | Euro(19カ国) | |
---|---|---|---|---|---|---|
OIL | 0.827 | 0.624 | -0.734 | 0.588 | 0.022 | 0.212 |
カナダ | 日本 | ノルウェー | イギリス | Euro(19カ国) | |
---|---|---|---|---|---|
オーストラリア | 0.397 | -0.236 | 0.107 | -0.039 | -0.083 |
カナダ | -0.198 | 0.146 | 0.000 | 0.010 | |
日本 | -0.116 | -0.129 | 0.001 | ||
ノルウェー | -0.051 | 0.056 | |||
イギリス | -0.298 |
オーストラリア | カナダ | 日本 | ノルウェー | イギリス | Euro(19カ国) |
---|---|---|---|---|---|
55.4% | 75.5% | 44.8% | 69.9% | 87.8% | 82.7% |