執筆者 | 後 房雄 (ファカルティフェロー) |
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研究プロジェクト | 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究 |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
特定研究 (第三期:2011~2015年度)
「官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究」プロジェクト
経済産業研究所が行った「日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」の第1回(2010年)、第2回(2012年)に続く第3回(2014年)の結果を紹介、分析することによって、公共サービス改革が進展する日本において、政府行政セクター、市場セクターと並ぶサードセクターを構築するための現状の実態と課題を検討した。サードセクター組織全体の総収入の中央値は1億7658万円⇒5050万円⇒4336万円と減少してきているが、これは主に協同組合の減少によるもので、非営利組織全体としては、2億5042万円⇒5809万円⇒6467万円とこの2年間で回復が見られる。
個々の法人形態毎の組織的力量についてみると、以下のような3グループが形成されており、過去2回の構成と大幅な変化はない。
[高い]社会福祉法人(17)、社会医療法人(15)、信用金庫、信用組合、労働金庫(13)、学校法人(12)、医療法人(9)、共済組合(5)。
[中間]公益財団法人(2)、公益社団法人(1)、消費生活協同組合(-1)、農業協同組合(-1)、一般社団法人(上記以外)(-1)、一般財団法人(非営利型)(-1)、一般財団法人(上記以外)(-1)、その他の法人(-2)、一般社団法人(非営利型)(-3)、更生保護法人(-3)。
[低い]特定非営利活動法人(-6)、認定・特定非営利活動法人(-7)、特殊法人、独立行政法人、認可法人、各種の公法人(-8)、森林組合(-9)、漁業協同組合(-11)、職業訓練法人(-14)、法人格なし・地縁(-16)、法人格なし・地縁以外(-16)、中小企業等協同組合(-17)、その他の組合(-18)。
収入構造を、「稼いだ収入(earned income)」と「もらった収入(voluntary income)」の割合と公的資金の割合によって分類した結果においても、表のような顕著なタイプの違いをあらためて確認することができた。両方の割合が高い法人形態がより鮮明になり、その他の多くの法人形態は稼いだ収入の割合は高いが公的資金の割合は相対的に低い。
なお、非営利組織への市民からの寄付額の平均値は、743万円⇒501万円⇒775万円と推移しており、公益法人制度改革や税額控除制度(2012年)の効果が明確に確認できた。
サードセクター全体の収入の66.6%、非営利組織全体の収入の75.5%が公的資金(ほとんどが補助金でなく稼いだ収入)となっており、公共サービス改革の進展のなかで、特に非営利組織の実施主体としての役割が大きいことが分かる。それゆえ、非営利組織の自律性を保障してそのメリットが活かせるような官民関係のルール化、自由主義的改革が重要となっている。なかでも、多くの分野で準市場(バウチャー制度)が導入されたものの、特定の法人形態の参入独占が維持されていることが問題である。これを開放することは、良い公共サービスを実現するとともにサードセクターの分断を解消するうえでも重要である。