ノンテクニカルサマリー

2013年度改訂版「総合エネルギー統計」の開発について

執筆者 戒能 一成 (研究員)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

経済産業省資源エネルギー庁が策定する「総合エネルギー統計」は、現在2005年度に筆者が開発したシステムを用いて算定されており、エネルギー・環境政策の基礎的統計として用いられているが、特に東日本大震災後のエネルギー需給環境の変化を受け部分的な精度低下が顕著化するなど改修が必要な状況となっている。

一方、2005年度から開始されたエネルギー消費統計は、第三次産業などのエネルギー消費構造を精緻に把握すべく開始された大規模な一般統計調査であるものの、在来手法の集計処理を行っただけでは精度が不十分であり「総合エネルギー統計」に使用できない状況が継続していたところである。

当該問題を解決するため、供給側では、石油精製部門において原油発熱量・炭素排出係数の銘柄別算定化などの精度改善方策を、需要側では、第三次産業部分においてエネルギー消費統計の個票を2013年度に筆者が開発した再集計方法を適用し、運輸部門では2010年度に開始された自動車燃料消費調査の結果を適用するなど各種の精度改善措置を講じることにより、1990年度から2013年度迄の改訂版「総合エネルギー統計」を開発した。

当該改訂版「総合エネルギー統計」は、現行2005年度版と概ね同等の統計精度を維持した状態で日本標準産業分類中分類に準拠するなど業種分類概念の再整理と業種別分解能の向上に成功しており、今後ともエネルギー・環境政策の基礎的統計としての活用が期待される。

今後の課題としては、更なる統計精度の改善、再生可能エネルギー部分の強化・充実、当該統計を基礎とした地域別統計の整備などが挙げられ、今後とも関係団体・部局の協力を得つつ統計の質的向上に向けた地道な取組みを進めていくことが必要であると考えられる。