執筆者 | 孟 健軍 (客員研究員) |
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。
その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)
21世紀10年代に入り、中国は都市化の歩みを加速化させる歴史的に重要な時期を迎えている。最新の2010年第6回全国人口センサスにおいては都市在住人口が50%を超える結果となっている。都市化はすでに中国経済発展の壮大なドラマの1つとなっている一方、社会問題解決の難題の1つでもある。
中国では人類史上で最大規模ないくつかの都市群を形成しつつあり、今後の社会経済形態の転換に計り知れない影響を与えている。これらの大規模な都市群は主として東部沿海地域に位置する。そのうちの三大都市群とは広い意味で、北京市を中心とする環渤海地域、上海市を中心とする長江デルタ地域、そして広東省を中心とする珠江デルタ地域である。近年の経済発展に伴い、激しい労働力の構造変化が起きている。一国の近代化過程においては経済資源の配置は主に分散から集中へ、農業から非農業へと移行するが、これは産業化の過程と捉えることができる。したがって、産業間の労働力変化を通じて三大都市群の人口構造変動について考察することができる。全国では労働力構造(第一次産業、第二次産業、第三次産業それぞれの労働力比率)がすでに2000年第5回人口センサスの50.0:22.5:27.5から2010年第6回人口センサスの 36.7:28.7:34.6 までに大きく変わってきた。
筆者は、近年の急速なインフラ整備によってこの三大都市群の範囲は行政上の地区レベル以上の154都市地域により構成されていると考えている。2010年の人口センサスにおいて、これらの都市地域の平均人口規模は500万人に達した。三大都市群の省レベルにおける労働力構造は、第一次産業の労働力比率が急速に低下し、第三次産業の労働力比率は大幅に上昇している。そのなかで、2010年の北京の労働力構造は第二次産業もかなり低下し、5.5:23.6:70.9となり、すでに先進国の労働力構造そのものであった。また、三大都市群の核心地域およびメインゾーンに位置する天津、江蘇と浙江、広東全域では第一次産業の比率が減少したものの、第二次産業の比率が依然として高い。そのうち、江蘇は2000年から2010年までのわずか10年間で第一次産業の労働力が約30%減少したのに対して、第二次産業と第三次産業がそれぞれ16.4%と13.1%増加し、労働力構造の大きな転換を遂げてきた。しかし、三大都市群のサブゾーンおよび広大な後背地では第一次産業の労働力比率が大きく減ったにもかかわらず、いまだに40-60%台になる。中国の人口・労働力構造変動はこれらの基本データから今後20-30年はまだまだ続くと予想される。
中国における三大都市群の都市地域ではすでに、製造業を中心とする経済発展パターンからサービス業を中心とする経済成長への移行過程にあることが示唆されている。すなわち、これは中国の“世界の工場から世界の市場へ”の変貌の姿を窺わせる結果となっているであろう。2010年、三大都市群のGDP規模は、すでに29兆7906億元に達し、全国の74.2%を占めている。人口規模も7億6570万人に上り、全国の57.4%に相当する。
本論文はこの154都市地域を対象にし、2000年と2010年の人口センサスデータを用いて、三大都市群における人口構造変動とその要因を考察し、上記の結果を得たものである。具体的に、筆者はまず154都市地域の地域特性を通じ、三大都市群の定義と分類を行った。次に人口センサスデータの計量分析を通じ、三大都市群における人口構造変動の共通性と差異性を考察した。さらに、その変動要因は何かについて分析した。最後に、これらの人口構造変動によって中国の経済社会に及ぼす影響とその政策課題を探った。
省・直轄市・自治区 | 2000年の労働力 | 2010年の労働力 | 2010-2000の労働力変化 | ||||||
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第一次 | 第二次 | 第三次 | 第一次 | 第二次 | 第三次 | 第一次 | 第二次 | 第三次 | |
環渤海地域 | |||||||||
北京 | 13.0 | 30.9 | 56.1 | 5.5 | 23.6 | 70.9 | -7.6 | -7.3 | 14.8 |
天津 | 30.3 | 34.8 | 34.9 | 20.4 | 38.6 | 40.9 | -9.9 | 3.8 | 6.1 |
河北 | 70.8 | 14.1 | 15.1 | 59.7 | 19.6 | 20.7 | -11.1 | 5.6 | 5.6 |
遼寧 | 51.8 | 21.4 | 26.8 | 44.2 | 20.7 | 35.2 | -7.6 | -0.7 | 8.4 |
山東 | 68.8 | 15.7 | 15.5 | 54.5 | 22.9 | 22.6 | -14.3 | 7.2 | 7.1 |
長江デルタ地域 | |||||||||
上海 | 11.5 | 45.8 | 42.7 | 2.9 | 42.6 | 54.5 | -8.6 | -3.2 | 11.8 |
江蘇 | 52.3 | 27.7 | 20.1 | 22.8 | 44.0 | 33.2 | -29.5 | 16.4 | 13.1 |
浙江 | 33.7 | 40.7 | 25.6 | 14.8 | 51.8 | 33.4 | -19.0 | 11.2 | 7.8 |
安徽 | 75.0 | 10.7 | 14.3 | 54.2 | 21.6 | 24.3 | -20.8 | 10.9 | 9.9 |
福建 | 47.8 | 27.3 | 24.9 | 28.3 | 37.3 | 34.4 | -19.6 | 10.0 | 9.5 |
珠江デルタ地域 | |||||||||
広東 | 37.4 | 38.2 | 24.4 | 24.6 | 43.6 | 31.8 | -12.8 | 5.4 | 7.4 |
江西 | 68.4 | 13.6 | 18.0 | 44.4 | 30.6 | 25.1 | -24.0 | 16.9 | 7.0 |
湖南 | 75.0 | 9.7 | 15.4 | 55.9 | 19.3 | 24.8 | -19.1 | 9.7 | 9.4 |
広西 | 77.7 | 7.6 | 14.7 | 67.0 | 11.8 | 21.2 | -10.7 | 4.2 | 6.5 |
海南 | 68.1 | 8.1 | 23.8 | 59.1 | 9.4 | 31.5 | -9.0 | 1.3 | 7.7 |
全国 | 50.0 | 22.5 | 27.5 | 36.7 | 28.7 | 34.6 | -13.3 | 6.2 | 7.1 |
出所:国務院人口調査弁公室と国家統計局人口就業統計司編『第5回人口センサス(2000年)』、『第6回人口センサス(2010年)』 |