ノンテクニカルサマリー

エネルギー消費統計の精度改善方策について

執筆者 戒能 一成 (研究員)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果 (所属プロジェクトなし)

2005年度から開始された現行エネルギー消費統計は、業種別・地域別エネルギー消費構造を精緻に把握すべく経済産業省資源エネルギー庁が開始した大規模な一般統計調査である。しかし、供給側の公的統計などを用いて2006~2010年度の精度を評価した結果、電力・都市ガス・A重油で20%程度の非常に大きな統計誤差が存在すると評価され、総合エネルギー統計などでの活用が困難な状況が続いている。

当該問題の原因を究明するため、エネルギー消費統計の調査個票を用いて主要エネルギー源・業種別の消費量分布を直接観察し誤差要因を分析した。その結果、当該統計が中小零細規模の第三次産業・製造業を主たる調査対象とすることに起因して3桁間違・4桁間違や部分記入漏などの異常値が毎年高濃度かつ不安定に含まれているが、「箱ひげ図法」など一般的な異常値排除処理でこれに対応していたため、異常値が不安定に残留し、部分記入された正常値が異常値と誤判定され排除されていることが判明した。

当該誤差要因の分析結果に基づき、エネルギー消費統計における異常値排除処理を改善し異常値の残留や部分記入された正常値の誤排除防止の対策を行った結果、電力・都市ガス・A重油などの主要エネルギー源において2005~2009年度の平均で誤差5%以下、最大でも誤差7%程度で詳細な業種別消費量を推計できることが実証された。

但し、当該対策の実施により推計できるエネルギー源種別の減少や、自家発電・蒸気発生の直接効率推計の困難化などの「副作用」が発生するため、今後とも実効回収率の向上や異常値排除法の高度化など更なる検討・改善が必要であると考えられる。

図1・図2:電力・都市ガスにおける新たな精度改善方策の精度比較評価結果
図1・図2:都市ガスにおける新たな精度改善方策の精度比較評価結果

* 本資料中の分析・試算結果等は筆者個人の見解を示すものであって、筆者が現在所属する独立行政法人経済産業研究所、独立行政法人原子力損害賠償支援機構、国立大学法人東京大学公共政策大学院、慶應義塾大学産業研究所、国際連合気候変動枠組条約CDM理事会など組織の見解を示すものではありません。