私たちは2022年度から継続して、ふるさと納税に関する実態調査を実施し、その結果を発信してきた(注1)。今回も全国約1万人を対象に、2025年度の「ふるさと納税実態調査」を実施した。例年8月頃に総務省が公表する「ふるさと納税に関する現況調査」(注2)とは異なる視点から最新の動向を明らかにするとともに、2026年度のふるさと納税の方向性について考察する。
1.速報!2025年度版 寄附先上位21自治体の返礼品の特徴
図表1は、回答者全体を対象とした寄附先自治体人気ランキングと、それぞれの自治体に最も多くの金額を寄附した人が選択した返礼品(上位3位まで)を分析した結果である。
返礼品の特徴をみると、宮崎県都城市では上位3位までを肉が占めた。一方、北海道沿岸部の自治体では海産物が1位となる一方で、肉も上位に入っている。米が1位となった自治体は6自治体あり、米価格が高騰した昨年は、返礼品としての米への需要の高さもうかがえる。
黄色で示した日用品が1位となったのは、静岡県富士市、富士宮市、栃木県小山市である。トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの紙製品を選んだ人の割合が高かった。富士市は「紙のまち」として知られ、全国のトイレットペーパー生産量の約4割を占める(注3)。物価高が続く中、生活必需品を返礼品として選ぶことは、家計負担の軽減と地域産業の支援を両立する選択となっている。
さらに16位の愛知県名古屋市に注目すると、図表1で唯一、「美容・健康家電」が1位となった。名古屋市の返礼品には、市内に本社を置く企業の「ReFa」「SIXPAD」「radiant」などがあり、地域企業のブランド力を活かした返礼品が支持を集めている。紙製品が生活を支える実用品であるのに対し、美容・健康家電は地域産業を支えるだけでなく、寄附者に地域ブランドの製品を試す機会を提供し、その魅力を知るきっかけにもなっている。
このように、返礼品は寄附者へのメリットだけでなく、地域産業の振興にもつながっている。地域産業の産品が返礼品として選ばれることで、自治体、寄附者、返礼品提供事業者の三者にメリットをもたらす「三方よし」の仕組みである。
2.理念はどれだけ知られ、寄附先選択に活かされているのか
ふるさと納税は、寄附者が寄附先を選択することにより、生まれ故郷やお世話になった地域、応援したい地域など、寄附者にとっての「ふるさと」に貢献できる仕組みとして導入された。しかし、近年では制度本来の理念(注4)が薄れ、返礼品が重視されていることが指摘されている。
そこで今回は、寄附者がふるさと納税の理念をどの程度認識し、それが実際の寄附先選択にどのように反映されているのかを分析した。これまでの調査では、寄附先自治体の選択において返礼品が重視されていることが確認されてきた。では、理念はどこまで理解され、実際の寄附行動に反映されているのだろうか。
図表2より、ふるさと納税の理念を知っている人は54.5%と半数を超えた。一方、理念を理解し、その理念に沿って寄附先を選択している人は20.1%にとどまった。理念を認知していることと、その理念に基づいて行動することとの間には大きなギャップがあり、寄附先選択における理念の影響は限定的であることが示された。
サンプルサイズ n=10,850
3.理念に沿う人・沿わない人は、何を基準に寄附先を選んでいるのか
では、理念に沿って寄附先を選ぶ人と、そうでない人では、寄附先選択の意思決定はどのように異なるのだろうか。図表3は、最も多くの金額を寄附した自治体を選ぶ際に、最初に意思決定した要素を比較したものである。
サンプルサイズ:10,850サンプル
各グループで最も割合が高かったのは、「返礼品のジャンルや品目」であった。理念に沿って寄附先を選んでいる人では30.3%であったのに対し、理念に沿って選んでいない人では48.8%と約半数を占めた。
一方、「寄附金の使い道や政策」を最初の判断基準とした人は、理念に沿って寄附先を選んでいる人では25.3%であったのに対し、そうでない人では11.3%にとどまった。「自治体そのもの」を最初に選んだ人も、それぞれ12.3%、3.4%と少数であった。「最も多く寄附した自治体」を対象とした設問であるにもかかわらず、自治体自体を起点に意思決定している人は多くないことが分かる。
以上より、理念に沿って寄附先を選ぶ人では、「返礼品」と「寄附金の使い道や政策」がほぼ同程度に意思決定の出発点となっている。一方、理念に沿って選んでいない人では、返礼品が他の要素を大きく上回り、寄附先選択を左右する主要な判断基準となっている。また、「その他・分からない・覚えていない」と回答した割合も理念に沿って選ぶ人の約2倍であり、自らの意思決定過程を明確に認識していない人も少なくない。こうした結果から、理念の有無にかかわらず、寄附先となる自治体そのものよりも、返礼品が寄附先選択の入口となっていることが示唆される。
まとめ 2025年度速報結果から見えた2026年度ふるさと納税への示唆
興味深いことに、理念に沿って寄附先を選ぶ人と、そうでない人では、寄附先選択の意思決定には違いがみられた。しかし、「最も多くの金額を寄附した自治体」の顔ぶれはほぼ共通していた。両者とも宮崎県都城市が1位、北海道紋別市が4位となり、大阪府泉佐野市なども共通して上位に入った。順位には違いがあるものの、上位10位のうち9自治体が共通しており、意思決定の入口は異なっていても、最終的に選ばれる自治体はほぼ同じであった。
2025年度の調査結果からは、寄附先を選ぶ際の考え方には違いがある一方で、人気自治体への寄附が引き続き集中していることが確認された。また、返礼品では魚介・海産物、肉、米といった定番の食品に加え、紙製品などの日用品や美容・健康家電など、地域産業の特色を活かした返礼品にも支持が広がっていた。
2026年10月には、ふるさと納税の指定基準の見直し等(注5)が予定されており、自治体には募集費用の透明化や地場産品基準への対応が求められる。返礼品の基準が見直される中で、今後は返礼品の魅力だけでなく、地域産業や寄附金の使い道など、自治体ならではの価値をどのように伝えていくかが、寄附先として選ばれるための重要な要素になると考えられる。
【調査概要】
「ふるさと納税実態調査」
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~64歳男女/有職者/個人年収300万円以上(※)
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、2025年1月~12月にふるさと納税制度で寄附を行ったと回答した方
標本サイズ:n=10,850
調査実施時期:2026年1月28(水)~2026年1月30日(金)
(※)総務省の「全額(2,000円を除く)控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」に従い個人年収300万円以上を対象者条件と設定した。