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電波探検隊

※本プロジェクトは、終了しております。

地上デジタル放送問題を巡る諸問題(2003年10月15日更新)

↓で書いた迷走する地上デジタル放送について、ほぼ1年が経過しましたが、その後もアナアナ変換などの事業が着実に進行している一方で、下記で指摘したような地上デジタル放送を巡る根本的な問題、つまり通信と放送の融合についての議論はあまり進んでいません。しかし、家庭へのブロードバンドの普及がすすみ、光ファイバー敷設もそれほど難しい問題ではなくなってきた現在、下記の問いかけはより重く聞こえてくるはずでしょう。

今回は、最近のit研究グループにおけるデジタル放送関連の記事・レポートなどを集めてみました。

2002年11月8日記

デジタル放送が迷走を続けています。そもそも、「通信と放送の融合」を目指して、デジタル放送に向けて官民一体となって動き出してから、既に10年近くが立とうとしていますが、デジタル放送が国民の間に広く普及しているということには残念ながらなっていませんし、そもそもこのデジタル放送が情報通信政策の中でも大きな問題であると言うこと自体、国民の間には十分理解が進んでいないように見えます。

鳴り物入りで華やかにスタートしたBSデジタル放送も、今は経営を続けていくのに精一杯な状況ですし、本命とされる地上波テレビのデジタル化も、地方局の設備更新費用をどう負担していくのか、おそらく破滅的な状況となるであろう地方局の経営を今後どうしていくのか、そして2003年に本当に東名阪で放送が開始できるのかどうか等、大きな課題となっています。

一方、その間にも、通信と放送の融合は急激に進みつつあります。インターネット、さらには高速常時接続環境の爆発的な普及です。(2002年9月末段階で、PCで接続するインターネット接続を利用している世帯のおよそ3分の1がDSL/ケーブル/WLL/FTTH等の「ブロードバンド」環境にあるとされます:ビデオリサーチネットコムの調査より)

この調子では、2010年までかかって、テレビという閉じられた空間のデジタル化を多額の国費をつぎ込んで実施するより先に、FTTH等による高速インターネットをベースとした、TCP/IP技術を採用した「インターネットTV」の方が速く普及してしまうのではないでしょうか。つまりテレビ側からの「放送と通信の融合」ではなく、「インターネットの上に展開される様々なサービス」の一つにテレビがなる、という意味での「通信と放送の融合」ということです。

しかし一方で、この問題を複雑にしているのが、本来このような失敗の連続であるデジタル放送政策に関して批判的に検討すべきテレビ局・新聞が、自らがその政策の受益者となっているために、批判がなかなかできていないことです。

現在、この問題が多額の国費(我々の携帯電話料金からも毎月支払われている「電波利用料」)をつぎ込む事態となりつつあることから、徐々に世間の耳目を集めつつあるところですが、それでも、この問題に対して正面から取り組んでいるマスメディアは残念ながら,あまりありません。一部の専門家や、業界関係者が、ネットの掲示板などで、どうなるかを冷や汗もので見守りながら議論している、というのが正直なところではないでしょうか。

電波探検隊では、このような状況を憂慮し、我が国の貴重な国庫からの負担を湯水のようにつぎ込む危険性があり、なおかつそれが我が国のインターネットの普及に多大な(悪)影響を与えるのではないかという懸念を強く持っています。 そこで、デジタル放送の何が問題になっているのかを検討する材料を提供し、国民の間に議論を喚起することを目的にこの特集ページを通じて、積極的に問題提起や議論を行っていきたいと考えています。

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2003年10月15日掲載