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執筆者 編著:池田 信夫、林 紘一郎 出版社 東洋経済新報社/定価2500円+税 ISBN 4-492-31305-2 発行年月 2002年4月 購入 Amazon.co.jp/ビーケーワン
内容
政府のIT戦略本部の規制改革専門調査会が2001年12月にまとめた報告書が、予想外に大きな反響を呼んでいる。この報告書は、映像・音声を含むすべての情報が物理的なインフラを問わずIP(インターネット・プロトコル)に乗って伝送されるブロードバンド時代に対応し、従来の業界ごとの「縦割り行政」を脱却して通信と放送を統合し、インフラを開放してコンテンツへの規制を撤廃する「横割り」に転換しようというものである。
これに対して放送業界などが強く反発し、民間放送連盟や新聞協会が改革に反対する「意見書」を首相あてに出す騒ぎとなった。しかし、その理由は「水平分離すると災害・緊急時の報道等に支障をきたす」といった意味不明のもので、問題が当事者にも行政にも十分理解されていないように見受けられる。
このように日本での規制改革論議が立ち遅れている一つの原因は、総務省(旧郵政省)による家父長的な通信・放送行政が長く続いてきたため、欧米で10年以上にわたって行われてきた通信・放送規制をめぐる論争がほとんど知られていないことにあろう。インフラとコンテンツを分離(アンバンドル)すべきか、そのために企業を分割すべきか、あるいは事前の許認可が必要か事後規制で十分か、といった問題については、結論は出ないまでも論点は出尽くしており、それを知らないで「放送の公共性」などという見当違いの話を持ち出しても議論は噛み合わない。
本書は、このような世界的な通信・放送・インターネットについての制度改革をめぐる議論を整理し、それを踏まえてブロードバンド時代にふさわしい制度のあり方を考えようとするものである。
本書の骨格は、2001年10月19日に独立行政法人・経済産業研究所(RIETI)と経済産業省の主催で開催された政策シンポジウム「ブロードバンド時代の制度設計」の記録をもとにしており、編者の林紘一郎を座長として組織された「インターネット規制政策の在り方研究会」を中心とするメンバーが執筆したものである。
2002年3月
編者
※序章(全文)をPDFファイルでお読みいただけます。ダウンロード[PDF: 84KB]
※第9章(β版)をPDFファイルでお読みいただけます。ダウンロード[PDF: 22KB]
- 序章 ブロードバンド時代に向けて(林紘一郎)
- 第1章 創造のためのアーキテクチャ(ローレンス・レッシグ)
- 第2章 インターネットと非規制政策(林紘一郎)
- 第3章 アメリカのインターネット規制(城所岩生)
- 第4章 インターネットと相互接続・アンバンドリング(福家秀紀)
- 第5章 コモンズとしての電波(池田信夫)
- 第6章 ユニバーサル・サービスとデジタル・デバイド(田川義博)
- 第7章 セルフ・ガバナンスの意義と変容(土屋大洋)
- 第8章 次世代インターネットの基盤(山田肇・池田信夫)
- 第9章 RIETI政策シンポジウムの記録
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