ブロードバンド戦略

ブロードバンド時代の制度設計

※本プロジェクトは、終了しております。

表紙写真
執筆者 編著:池田 信夫、林 紘一郎
出版社 東洋経済新報社 / 定価2500円+税
ISBN 4-492-31305-2
発行年月 2002年4月
購入 Amazon.co.jpビーケーワン

「ブロードバンド時代の制度設計」について

ブロードバンド時代に向けて、「水平分離」の規制改革を考える

日本でも、昨年から急速にDSL(デジタル加入者線)が普及し、ケーブル・インターネットや光ファイバーを含めたブロードバンド人口は400万人に迫っています。しかし消費者にとっては、8メガビットとか100メガビットといわれても、何に使うのかよくわかりません。インフラは電話回線の何百倍も高速になったのに、コンテンツ(中身)が今までと変わらないのでは、高速道路を建設して自転車を走らせているようなものです。

この一つの原因は、通信と放送の制度が「縦割り」になって、コンテンツの自由な流通をさまたげていることです。たとえばNHKのアーカイブ(資料庫)には180万本もの番組がオンライン配信可能な状態で保管されていますが、総務省は「NHKがインターネットで流せるのは1週間以内の番組に限る」という規制をしてしまいました。一方、NTTグループの放送事業への進出は、禁止に等しい状態です。こういう時代遅れの制度を放置して、いくらパイプだけを太くしても、ブロードバンドは米国のように息切れしてしまうでしょう。

光ファイバーでテレビの映像が流せる時代には、通信と放送を区別する意味はないので、既存業者に独占されているインフラをコンテンツ産業に広く開放しようというのが、IT戦略本部が昨年末に出した「水平分離」案です。これには民放連や新聞協会が「水平分離すると緊急報道ができない」などという理由で反対していますが、それでは水平分離されている欧州の放送局は緊急報道ができないのでしょうか。このように議論がかみあわない一つの原因は、世界的な通信・放送規制をめぐる論争が、日本でほとんど知られていないためでしょう。

本書は、昨年10月にスタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授を迎えて開催したRIETI政策シンポジウムの記録をもとに、8人の著者が書いた論文集です。30年以上前の米国の「コンピュータ調査」に始まる「水平分離」をめぐる論争を踏まえ、インターネットのガバナンスや電波政策、それにIPv6など最新の話題を紹介し、ブロードバンド時代にふさわしい規制改革のあり方を考えます。

編者・筆者を代表して
池田信夫

目次

※林紘一郎・慶應義塾大学教授による、序章「ブロードバンド時代に向けて」の最終稿バージョンを、PDF形式で配布しています。わかりやすく本書の目的・各章のねらいなどを解説しておりますので、ぜひダウンロードいただき、お読みください。

  1. 序章 ブロードバンド時代に向けて(林紘一郎)
  2. 第1章 創造のためのアーキテクチャ(ローレンス・レッシグ)
  3. 第2章 インターネットと非規制政策(林紘一郎)
  4. 第3章 アメリカのインターネット規制(城所岩生)
  5. 第4章 インターネットと相互接続・アンバンドリング(福家秀紀)
  6. 第5章 コモンズとしての電波(池田信夫)
  7. 第6章 ユニバーサル・サービスとデジタル・デバイド(田川義博)
  8. 第7章 セルフ・ガバナンスの意義と変容(土屋大洋)
  9. 第8章 次世代インターネットの基盤(山田肇・池田信夫)
  10. 第9章 RIETI政策シンポジウムの記録