北朝鮮は多くの日本人にとっては「近くて遠い国」である。世論調査を見ても、2000年代初めから現在まで北朝鮮に対する関心事項としては常に「日本人拉致問題」、「ミサイル問題」、「核問題」などが上位を占める一方で文化や経済交流への関心はわずかである(注1)。メディアでも核・ミサイル問題や日本人拉致問題を報じられるものの、この国の全体像を知る機会は少ない。CIA(米国中央情報局)のデータによれば、北朝鮮の国土面積は約12万㎢(朝鮮半島の約55%、日本の約3分の1)で、CIA(米国中央情報局)のデータによれば、人口約2600万人のうち約115万人が軍人である(注2)。なお韓国の人口は約5,200万人、軍人の数は約55万人であるので(注3)、大まかにいうと北朝鮮に比べて人口は2倍、軍人の数は半分ということになる。
日本による対北朝鮮制裁
日本では、北朝鮮との間での日本人拉致問題などの解決に向けた外交交渉力強化のために、2004年に北朝鮮船舶の入港制限を狙いとした「特定船舶入港禁止法」が成立していた。2006年、北朝鮮は7月に弾道ミサイル発射実験を、そして10月に初の核実験を実施した。これに対し国際連合(以下「国連」)では、国際の平和と安全に関する問題を扱う安全保障理事会(以下「安保理」)が、北朝鮮による大量破壊兵器等の開発をやめさせるための措置(「安保理決議」という)を採択した。これを受けて、日本では安保理決議に基づく措置を実施するとともに、独自に対北朝鮮制裁を開始した。
日本の対北朝鮮独自制裁を概観するとまず、2006年7月の弾道ミサイル発射実験の同日に、日朝間を往来する北朝鮮の貨客船万景峰(マンギョンボン)九二号の入港禁止、日朝間の航空チャーター便の日本への乗入禁止、北朝鮮当局職員の入国禁止を定めるとともに日本から北朝鮮への渡航自粛を要請した。同年9月には、7月の弾道ミサイル発射実験を受けて採択された安保理決議1695号の実施のために北朝鮮の大量破壊兵器開発等に関与する企業・個人を資産凍結の対象に指定した。同年10月の核実験に際しては、日本独自の制裁として北朝鮮からの輸入禁止、北朝鮮国籍者の入国の原則禁止、北朝鮮船舶の入港禁止措置を定めるとともに、安保理決議1718号の義務を履行するための措置として北朝鮮に対する大量破壊兵器関連物資の輸出禁止と奢侈品の輸出禁止が定められた。2009年には北朝鮮によるミサイル発射実験と2度目の核実験が行われ、日本では北朝鮮への輸出の全面禁止や対北朝鮮措置に違反した外国人船員や在日外国人の再入国の原則禁止に踏み切った。この2度目の核実験に対して安保理では決議1874号が採択されたが、この決議で定められた船舶の貨物検査を履行するため2010年には貨物検査特別措置法が制定された。北朝鮮に対する支払いや資金の移転については、資産凍結の対象が安保理決議に基づく指定などに合わせて随時拡大されたほか、日本独自の措置として2009年に現金の海外持ち出しの際に申告が必要な額や海外向けの支払いの際の報告が必要な額を北朝鮮向けのみ引き下げた。その後この基準額はさらに引き下げられ、2016年には北朝鮮向けに持ち出す場合に申告が必要な額を10万円超とするとともに、北朝鮮向けの支払いを原則禁止とした。なお、この年には日本独自の措置として同年以降北朝鮮に入港した船舶の入港も禁止された。
このような状況に照らせば、日本では北朝鮮とのビジネスに関しては制裁以前から関心が低く、さらに制裁を通じて日本と北朝鮮との間のヒト・モノ・カネの移転が厳しく制限されているようにみえる。多くの日本人は、自分は北朝鮮との取引とは無縁であると思っているのではないだろうか。
他方で、国際的には日本に向けられる視線は厳しい。マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ・大量破壊兵器開発のための資金移転などの不正な資金活動を防止するための国際協力機関である金融作業部会(Financial Action Task Force, 以下FATF)は、2021年に公表した相互審査報告書で日本に対し「北朝鮮との地理的近接性および日本の一部の居住者と北朝鮮の市民との文化的つながりにより、北朝鮮制裁の違反への脆弱性が高まっている」と指摘した(注4)。
日本政府はこれまで北朝鮮に対して日本人拉致問題などの一刻も早い解決や核・弾道ミサイル開発がもたらす安全保障上のリスクへの対応から断固たる姿勢で安保理以上の厳格な制裁を行っているという立場を取ってきた。しかし、2016年以降も安保理決議による北朝鮮制裁が強化されたにもかかわらず、日本の法整備は決議で新たに追加された措置に対応しておらず、北朝鮮による決議違反を効果的に防止できていない。このような日本の状況に対し世界からも厳しい視線が向けられている。北朝鮮によるテロやサイバー攻撃のターゲットとなり得る重要インフラや先端技術の保護は今年成立した「経済安全保障推進法」においても重要な柱となっている。さらに来年の2023年、日本はG7の議長国となるとともに、安保理非常任理事国ともなる。日本として北朝鮮のミサイル・核開発に対する国際的な連携を呼び掛けるためにはまず自らが国内における北朝鮮制裁違反を防止するための対策を取るべきではないか。
国内における安保理決議の未履行
安保理は2016年から2017年にかけて北朝鮮の外貨獲得手段の多くを決議で禁止した。日本はその2年間安保理非常任理事国としてそれらの決議に常に賛成票を投じた国であったにもかかわらず、安保理決議で新たに定められた措置のほとんどを国内法制化していない(注5)。
日本では、安保理決議の内容は自動的に取り締まりの対象になるわけではない。安保理制裁の違反となる行為が日本で行われた場合、その行為が既存の法律で禁止された行為に当たるか、その行為を禁止する法律が新たに定められなければ、その行為を日本では取り締まることができない。例えば、安保理による対北朝鮮決議には、「北朝鮮の団体や個人との合弁企業(ジョイントベンチャー)や共同事業体の開設、維持および運営を禁止する。既存の組織は解散しなければならない」という規定がある(注6)。しかし、日本には、「北朝鮮の団体や個人との合弁企業や共同事業体の設立を禁止する、また、既存の組織は解散しなければならない」という法律はないため、北朝鮮との間で過去に設立された組織を解散する必要がないし、新たな合弁企業や事業体を設立・運営しても国内法違反にならない。一般には、企業が違法な行為をしていたり設立目的が法に反していたりする場合、裁判所により解散命令を出し得るが、日本政府が安保理に提出した決議の履行報告書には北朝鮮との合弁企業の禁止や既存の組織の解散のための措置が取られたという記載はない(注7)。
安保理決議の法律の未整備に関する問題は、決議上の措置に直接対応する国内法の規定がないという場合の他に、決議の文言上の規定を履行するだけでは決議が本来予定した目的を達せられない場合がある。その例となるのが北朝鮮の出稼ぎ労働者による外貨獲得の禁止に関する問題である。この措置の履行については、各国が北朝鮮からの派遣労働者を2019年末までに北朝鮮に送還する(ただしその国にいる北朝鮮人が出稼ぎ労働者ではなく難民として居住している場合など送還が禁止されていると各国が判断する場合を除く)義務が定められている(注8)。またこれに先立ち、2017年には労働者の新規受け入れを禁止するため、北朝鮮国民に対する就労許可の発給が禁止された(注9)。一見すると、就労のための新たな入国を認めず、すでに入国した労働者は送還させるのだから、これですべての義務は果たせているようにみえる。しかし、実はこの2つの規定とも「各国政府は国内での北朝鮮人出稼ぎ労働者の就労を禁止せよ」と書いてあるわけではない。従って、単に決議を文言通りに国内法制化するだけでなく、決議が本来目的としている北朝鮮人労働者の国内での就労自体を禁止する法令も必要となる。なぜなら、北朝鮮労働者の中でも高給(1人あたり月に5000ドルから1万ドル程度を稼いでいるといわれる)であるIT技術者は入国することなく就労が可能であり、実際にそのような事例が多く報告されているからである(注10)。従って、北朝鮮国内あるいは国外に滞在している北朝鮮のIT技術者が、日本に入国することなく日本企業の業務をオンライン上で請け負い、外貨を獲得することを日本政府が禁止する必要がある。日本政府は、北朝鮮からの入国を原則として認めていないので、安保理が定めた「国内にいる北朝鮮労働者の送還」や「労働者の受け入れの禁止」に関する国内法整備は必要ないという立場を取っている(注11)。しかし、この規定が本来目的としている北朝鮮人による海外での就労による外貨稼ぎを防ぐためには、国境間の人の移動を伴わないオンライン上での業務請負も禁止する必要がある。現にこのような事案は日本でも海外でも起きている。このように、決議上の義務の中には、安保理の規定を忠実に解釈して法制化するだけでは不十分で、その趣旨を踏まえて決議の目的を実現するための措置を法制化する必要がある。
今年の2022年5月には安保理でさらなる制裁強化を求める対北朝鮮制裁決議が否決された。しかし、現在すでにある決議の厳格な履行や、各国独自の制裁強化によっても北朝鮮の外貨獲得手段を制限することは可能である。特にインターネット上での活動については、安保理でそれ自体に関する措置が定められていない上、北朝鮮によるサイバー攻撃や安全保障上重要な情報の窃取にも利用されるリスクがある。これに対抗するための各国による独自の措置が急務である。
日本で起きている安保理決議違反
安保理による北朝鮮制裁の履行状況を監視している国連の専門家パネルは、決議違反事案に関する調査結果を年2回報告している。このパネルにより報告される事案には日本関連のものも少なくない。最近の報告書だけを見ても、日本の旅行会社がウェブサイト上で北朝鮮での(安保理決議で北朝鮮からの輸入が禁止された)衣服のオーダーメードを宣伝していた事案や、日本の海運会社が中国企業に当該企業の日本側代理人を通じて売却した船舶(安保理決議で北朝鮮への輸出が禁止されている)が北朝鮮による「瀬取り」に使用されている事案などが報告されている(注12)。
また最近の報道では、北朝鮮工作員とみられる男が協力者の韓国籍男女2名に日本で貿易会社を設立させ、日本人男性を役員とした上で、この貿易会社を北朝鮮との海産物貿易取引などを行うためのカバーカンパニーとして利用した事案が報じられた(注13)。協力者の韓国籍男女2名は、入国の際に虚偽の申請を行ったとして入管難民法違反容疑で逮捕されたが起訴猶予となった。安保理決議では北朝鮮との合弁企業や共同事業体の設立、維持が禁止されている(注14)。しかし日本ではこの決議の条項について国内法が定められていないため、本件のように北朝鮮国民による代理人を利用した合弁企業設立やそれを助けたり他人に指示したりする行為を日本で取り締まることができない。
さらに、近年安保理決議により北朝鮮人の海外への出稼ぎ労働が禁止される中で、国連や米国などが、北朝鮮人のIT技術者が国籍などを隠してオンライン上で業務を請け負っていると警告を発してきた。そのような中、日本でまさに懸念されていた事案が実際に起きていたと報じられた(注15)。報道によると、中国在住の北朝鮮人IT技術者が、日本在住の韓国人男性の名義で日本の複数のIT業務請負仲介サイトに登録して日本企業の業務を請け負っていた。その報酬は名義を貸していた韓国人男性が、北朝鮮人IT技術者の日本在住の親族女性の口座に振り込み、北朝鮮人IT技術者は中国で銀行のカードを使って報酬を引き出していた。この事案は日本に居住する者が北朝鮮国民の海外での就労を支援していたことになる。しかし日本は安保理決議に基づく北朝鮮の派遣労働者の禁止について法制化しておらず、今回のような北朝鮮労働者のオンライン上での就労やその支援自体を規制する法律もない。この事案では日本に居住する韓国人男性と北朝鮮人の親族女性は、IT業務の報酬の不正な送金やその支援をしたとして銀行法違反容疑(無許可営業)で書類送検されたが不起訴となった(注16)。
この事案で北朝鮮人IT技術者が請け負った業務の中には、地図情報や自治体の防災情報に関するアプリケーションに関するものが含まれていた(注17)。地図情報、特に重要施設の情報などは軍事作戦を行う上でも重要な情報である。また防災情報の伝達アプリケーションが機能しなければ災害時の被害の拡大やテロ攻撃などの際のパニックの発生につながる。さらに業務を通じてアプリケーションの登録者や地方公共団体の危機管理関係職員の情報を得られる可能性もある。
加えて、この事案は防ぎ得た事案であった。2020年にもこの事案と同一の業務請負サイトに中国企業に所属する北朝鮮国籍のIT技術者が日本在住の韓国籍男性の名義を使って業務請負を行い摘発されていた。この韓国人男性は虚偽の個人情報で業務請負サイトに登録したとして私電磁的記録不正作出・同供用容疑で摘発されたが、起訴猶予で不起訴となった(注18)。この時に事案を政府が積極的に公表し、IT技術者の業務仲介サイトの運営者に登録者の身元確認要件の強化を求めたり、地方自治体に対して雇用や契約に際しての注意喚起を通達したりしていれば、今回のような事案を防げた可能性がある。
なお、リモートワークで行える作業はIT技術者による作業のみにとどまらず、例えば翻訳業務(韓国・朝鮮語の翻訳とは限らず、英語の翻訳作業に北朝鮮人が従事することもあり得る)や文章校正、データ処理、画像作成など、およそオンライン上で行える作業であれば、第三者の身分をかたって北朝鮮人労働者が従事する可能性があり、そこから情報収集が行われる可能性もある。従って事業を問わず作業の外部委託には十分に注意する必要がある。
政府における対応強化の必要性
このように日本で数多くの安保理決議違反事例が報告され、かつ関係者が処罰されていないことは、FATFの相互審査で指摘された日本の北朝鮮関連のリスクを裏付けている。現在明るみに出たのは氷山の一角であると考えられ、類似の事案は今後も引き続き起きる可能性がある。従って一刻も早くこのような活動を防止するための措置を取り日本人や日本企業を守らなければならない。
そのためには、まず個別の事例について関係機関が積極的に公表するべきであるし、事案の詳細についての公表も必要である。公表しても名前を変えて活動する、手段が巧妙化するという指摘はある。しかし、公表の有無にかかわらず捜査の対象になった時点で当事者は何らかの対応を取るだろう。
また、決議が禁止する事項について国内法上も禁止しそれを周知することも必要である。決議違反となる行為に関与した者に国内法の網をかけることができれば類似の事案を抑止する効果もある。2016年から17年にかけての安保理の制裁強化により、北朝鮮の資金源を断つためさまざまな活動が規制されることとなった。北朝鮮人海外労働者の送還や北朝鮮船舶との「瀬取り」の禁止は日本でもよく知られているが、他にも先述の事案にみられるような北朝鮮との合弁組織の禁止、北朝鮮産の繊維製品や海産物などの輸入禁止、北朝鮮への支店開設の禁止などさまざまな措置がある。しかし、日本政府は独自制裁としての全面禁輸、送金制限などがすでに行われているために、日本と北朝鮮の間では経済活動が行えないという理由で、安保理による制裁強化に対応する個別の国内法上の措置をほとんど行っていない。また、決議に対応する国内的措置が取られた場合でも、立法措置ではなく関係業界団体への要請にとどまっていることが多い。
法律の制定には膨大な労力が必要である。内閣立法では立案する省庁の決定、省庁内での法律案作成のための部署の設立、連日深夜に及ぶ法案作成作業や与野党への説明、そして作成された法律案が国会に提出された後は国会審議への対応が必要となる。さらに、安保理決議は各国の法律と違い、内容が精緻に規定されているわけではない。そのため、安保理で禁止された行為を各国が法律にする際には、各国が安保理決議の文言を解釈して国内法を規定する必要がある。安保理決議で定められた「北朝鮮との合弁企業の禁止」を例に取れば、法律の中で「北朝鮮の個人・団体」や「合弁企業」を定義し、さらに具体的に禁止すべき行為を明文で定める必要がある。加えて、規制対象を検討する際には抜け穴やリスクへの対応も必要である。例えば北朝鮮の制裁逃れに第三国の国民を使うことはよく知られているので、単に「北朝鮮に住み北朝鮮の国籍を持つ者」との合弁企業だけを禁止するのでは不十分であり、北朝鮮の制裁逃れの手口を検討しそれに法の網をかけることができるような内容である必要がある。このような北朝鮮制裁の立法化自体の難しさからも、それを避けたい各省庁の意向は容易に理解できる。しかし、最近日本で起きた数々の事案は法律の未整備による問題を如実に示している。また、もはや軍事転用可能な物資や技術の製造、金融サービス、運送サービスなど決議に関係する活動が、業界団体に所属し政府の要請に積極的に従う企業だけによって行われる時代ではない。法的裏付けのない「要請」に頼るだけでは、要請相手方企業の範囲にも、その遵守にも限界がある。
さらに、日本の独自制裁にも抜け穴はある。「モノ」の規制でいえば日本では北朝鮮との貿易は第三国経由の貿易を含め法律では禁止されているものの、実際には第三国を通じた日本製品の北朝鮮への輸出は頻繁に起きている。また、「カネ」の規制についても北朝鮮に対する支払いの禁止にはさまざまな名目での例外規定があるし、北朝鮮への現金の持ち込みについては10万円を超える場合には申告が必要であるだけで持ち込み額の上限が定められているわけではない。また北朝鮮ではなく第三国に資金が送金されている事案もある。北朝鮮が第三国で物資を調達するために必要な外貨は決裁を容易にするためにも北朝鮮に送金する必要はない。このように北朝鮮が制裁回避のために第三国を利用してさまざまなネットワークを構築している中で、北朝鮮との貿易や送金を規制しているので対北朝鮮措置は万全であると主張するのはまったく現実に即していない。
このように、日本政府が、独自の制裁措置により日本では北朝鮮との経済活動は起きないという建前を取る一方で、実際には日本が北朝鮮制裁回避に利用されている。前述のFATFの対日審査で日本の北朝鮮リスクが高いと指摘されたことを日本政府は重く受け止めるべきである。
日本はこれまでも安保理による北朝鮮制裁の厳格な履行を各国に働きかけてきた。その日本が、実は安保理で各国に義務付けられた措置を履行するための法整備も十分でなく、現に日本を舞台に決議違反となる活動が行われていたというのでは、各国に対して北朝鮮制裁の履行を呼び掛ける立場にない。北朝鮮による核・ミサイル開発により安全保障上のリスクが最も高まる国である日本は、本来他国以上に厳格な立法措置と取り締まりを行うべき立場である。ところが、現在の日本政府の姿勢は他国の対応状況をみながら最小限の労力で対処しようとしているようにさえみえる。経済安全保障が国の重要課題である中、日本政府は北朝鮮による活動から国民や企業を守るために何が優先されるべきかという観点から、必要な法整備とその厳格な実施を進めるべきである。来年は日本政府が外交でイニシアチブを取れる立場となる絶好のタイミングである。ここで北朝鮮問題への各国の取り組みを促すために、まずは日本政府が北朝鮮制裁に関する日本の取り組みの現状と問題点を洗い出し、北朝鮮による制裁逃れや安保理決議の抜け穴に対処するためのベスト・プラクティスとなるような国内法の整備とその執行を自ら示すことが求められる。
*本稿は、2022年6月に日本国際問題研究所で行った報告「北朝鮮制裁違反事例にみる企業・研究機関のリスク管理」の内容を基に作成した。