添付の資料は、Policy Discussion Paper「JOBS Acts による米国の株式資本市場改革と周回遅れの日本(2020年9月) 」の概要に、データ等を追加しつつ、政策的含意を少しでもわかりやすく説明するために作成したものである。
このPDPでは、米国及び日本の株式資本市場の実態をデータで示すとともに、JOBS Actおよび関連の法改正等による米国の株式資本市場改革の内容と、これと比較した日本の規制について概観している。
日本では、金融商品取引法に基づき未上場株式の勧誘等に厳重な、厳格な規制が存在し、米国等の国々と比べ、未上場株式の店頭取引が不活発で、店頭市場も育っていない。
金融審議会市場制度ワーキンググループでも、成長資金の供給の在り方の検討において、非上場株式の流通等についての議論が始まっている。金融商品取引法の規制は、米国の証券取引法等と比べた場合、投資家保護を特に重視した事前防止型の厳格な規制のようにみえる。この規制が、いわゆる「岩盤規制」なのかどうかは、今後の関係者の議論と見直しの進捗によることになろう。
この厳重な規制の結果として、日本では、中堅・中小企業、ベンチャー企業の未上場株式による資本の調達とこれによる投資が十分行われずに、米国、中国等他国と比べ、日本のユニコーン企業を少なくし、中小企業が大企業へ成長することを難しくしている。
このように未上場株式市場が未発達で成長企業がエクイティ・ファイナンスを活用した大胆な投資が十分にできないことは、イノベーションの停滞と成長の鈍化を生じさせ、「失われた30年」といわれる状況を生み出す要因となっている可能性も示唆できよう。