連日報道され続ける拉致問題関連ニュース
「何しろメインが北朝鮮関連の報道なら、ほかのニュースより視聴率が10%は跳ね上がる」
民放のTVディレクターがこう話すように、北朝鮮関連ニュースは一日とあかずに登場する目玉イシューとなっている。日本での特派員生活が10年目を迎える外信記者は「最近の日本メディアが伝える北朝鮮関連の報道は、終戦から小泉訪朝までに報道されてきた北朝鮮関連のニュースの総計を上回るほどだ」という。
アメリカのイラクに対する攻撃が秒読みに入っているなか、現在、日本での一番の関心事は、イラクやアメリカではなく、北朝鮮である。契機はもちろん20年以上「凍土の王国」で青春を送らざるを得なかった5人の拉致被害者の帰還である。
今までの状況を見ると、日本での北朝鮮への関心は、当分の間、拉致問題から離れそうもない。政府関係者から可能性がある拉致被害者は100人にも上るとか、死亡したと報告された8人がまだ生きている可能性が高いという報道が後を絶たない状況で、日朝国交正常化の議論が国民的支持を得ることは難しい。
しかし、日本のこのような状況とは対照的に、アメリカ、中国、韓国などの日本の周辺諸国は北朝鮮が持つ「汎地球的脅威」、つまり、核問題に注目している。
いつのまにか、北朝鮮の核問題は従来の核「疑惑」から、現実の核開発の問題として処理されるようになった。10余年近く噂されてきた北朝鮮の核疑惑は、去る11月21日CIAの秘密報告書によると「北朝鮮、核爆弾1~2個保有」という結論になった。CIAの報告書は、中間選挙以後の共和党主導アメリカ議会で、北朝鮮に対する制裁の「証拠資料」として使用されることになる。日本と韓国では、核開発については未だに「噂」の次元で扱う傾向が強いが、アメリカは既に北朝鮮が核を持っている、という前提で戦略を立てている。
現在のアメリカの戦略は、核をあきらめれば支援があるが、核を持つ限り、アメリカは支援をしないことはもちろん、持てる手段のすべて使って核開発を阻止をする、と要約できる。現在、ブッシュ政権の外交政策に絶対的な影響力を持つスコウクロフト元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、11月14日付けのWall Street Journal紙で、北朝鮮に対する政策を以下のように説明した。
「北朝鮮が核拡散禁止義務を完全に守るまで、アメリカは国際社会とともに北朝鮮に対する貿易と投資の全面的な封鎖(EMBARGO)を実施しなければならない。在外朝鮮人からの送金も全面的に中断させなければならない」さらに、スコウクロフト元大統領補佐官は、「外交も制裁も効果がない場合、核開発計画そのものを攻撃するという軍事的方法以外には解決策がない」と断言した。
北朝鮮核開発に対する曖昧な日本の立場
北朝鮮へのアメリカの立場はこのように明快で断固としたものである。しかし、日本の北朝鮮への姿勢は、アメリカに比べると曖昧な点が多い。もちろん日本はアメリカ、韓国、中国と同様に北朝鮮の核開発に対しては反対の立場を明らかにしている。
去る11月3日東南アジア連合諸国(ASEAN)首脳会談当時、小泉首相は「中国も北朝鮮の核保有は望んでいない。北朝鮮に核開発放棄を求める」と語った。10月29日に開かれた日朝国交正常交渉でも日本は「ウラン濃縮プログラムの即時撤廃」を求めた。しかし、問題は日本政府のそのような発言にもかかわらず北朝鮮が核開発を続ける場合、日本が何のカードでこれを阻止するのか、ということである。外交的修辞として日本政府の「核開発反対の立場」を受け入れつつ、北朝鮮が核開発の中断を拒否した場合、日本が提示する「むち」は、どんなものなのか。また、現在、どこまで用意され、具体的にどう活かせるか?
日本の曖昧な立場は、北朝鮮への重油提供についての立場を見ると明白だ。アメリカは、北朝鮮が核開発計画を認めたことを1994年の米朝枠組み協定の違反として、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)協定によって1年に50万トンずつ提供されてきた重油の供給を、即時中止することを求めた。アメリカの中止要求は北朝鮮の核に対するアメリカの原則を勘案すると、あたりまえな結果だ。しかし、日本は3国間の会議が開かれる前、小泉首相が北朝鮮の核開発についての反対の立場を明らかにしたにもかかわらず、重油支援を続けなければならないと主張した。
韓国の場合、金大中大統領の太陽政策によって、一貫して北朝鮮に対する重油支援を賛成してきた。日本が重油支援を支持した理由は「KEDOが北朝鮮の核開発抑止のためには效果的な手段」とみなしているためである。3国間の会談は「日米の異見露呈」という異例な状況を演出したが、結局11月までに重油を供給し、それ以後、支援凍結するという結論で終った。日本の立場はまるで「総論賛成、各論反対」である。
核開発問題をめぐる日本政府の立場は、国交正常化問題でも同様である。日本は、北朝鮮の核開発と国交正常化問題の関係に関しての明確な枠組みを提示できていない。 去る11月1日、安倍官房副長官は朝日新聞でのインタビューで、「日朝国交正常化後に行う北朝鮮への経済協力が100万人の兵力維持のためなら困難だ。北朝鮮が拉致問題、核、ミサイルといった安全保障上の問題について誠実に答えていけば、当然、正常化される」との外交的なトーンの発言にとどまっている。
核問題に対する考え方が根本的に違う日米
日本に北朝鮮の核問題についての明確な基本原則がないように見える理由は、核問題に関する見方が根本的にアメリカとは異なるからだ。海外では、日本がアメリカからの情報機関を通じて流れる核問題を開発次元ではなく、実験レベルか「疑惑」次元のものとしてしか受け止めていないのではないかという恐れを抱いている。日本の判断が日本の情報力によるものなのか、アメリカ主導下の北朝鮮政策の枠組みには入りたくないからなのかどうかは分からない。しかし、明らかなのは日本では、ワシントン発の北朝鮮の核開発問題をジャーナリズム的観点で受け入れるだけで、真剣に考えている人が少ない、ということだ。
去る10月22日ホボドゥ駐韓アメリカ大使が明らかにした「小泉首相は北朝鮮の核開発についてアメリカから情報を受け取った状態で平壌を訪れた」という発言は、核開発に対する日本の姿勢を確かめる良い例だ。小泉首相の平壌訪問での成果の1つとして「北朝鮮ミサイル発射凍結を2003年以後に延長」というのがあるが、問題はミサイル発射次元ではなく、核開発問題である。小泉首相が核開発のレベルは重要視せずに、持っているミサイルの発射について焦点をあてたのは、核開発を既定事実として受け入れたというより、途中段階として認識した可能性がある。
日本の立場は、重油供給中断会談の時の「KEDOが北朝鮮の核開発抑止のために效果的な手段」という発言を通じても確認できる。
問題が山積みの日朝国交正常化交渉
北朝鮮が本当に核を持っているのかどうか、すなわちアメリカ情報機関の分析が正確なのかどうかは分からない。しかし、明白なのはブッシュ政権は自分の情報力から「悪の枢軸」への対応を具体化しているということだ。「核を持っているか、持とうとする場合には最後の方法として軍事力で対応する」という姿勢である。現在のイラクに対するアメリカの確固とした態度はその姿勢の証拠だ。アメリカは自分のスケジュールで北朝鮮の核開発問題に積極的に対応するだろう。それが現実になるのは、韓国に新しい大統領が就任し、イラク問題である程度の道筋がつく来年初以後である。この時期は44代アメリカ大統領選挙キャンペーンが実質的に始まる6ヵ月前に当たる。ボブ・ウッドワード記者は最近ワシントンポスト紙に連載した「ブッシュの戦争」で「ブッシュ大統領は北朝鮮を今すぐ打ち倒さなければならない対象として見ている」と報じた。
日本が緊迫した状況への変化にどう対応するか、北朝鮮が既に核開発を終えたと見るのかどうか、もし北朝鮮の核開発が事実だった場合、「双方は朝鮮半島の核問題の包括的な解決のために国際合意を遵守する」という平壌宣言はどのように対応されるのか…。
拉致問題と共に、日本が今すぐに解決しなければならない北朝鮮関連の宿題は山積みだ。