概要
政策立案者は、所得を増加し、労働者を貧困から救う手段として、最低賃金を提案することが多い。しかし、最低賃金導入によって一部の若年労働者の所得が改善するということは、すなわちその他の若年労働者に多くの負担を強いることを意味する。最低賃金は若者の雇用機会を減少させ、失業を生み出す。労働者は、最初は低賃金でも後に高い賃金に結びつくはずの職場での訓練(OJT)の機会を失い、仕事を見つけられない若者は、家族や社会福祉制度の支援を必要とする。労働市場への参入が遅れると、若年非熟練労働者の生涯所得が減少する。

主な研究結果
プラス面
- 最低賃金を導入し、かつ労働時間が最低賃金に応じて短縮されない場合は、若年労働者の収入増が見込める
- 最低賃金導入により、若年労働者の得られる利益が就労できない若者の損失を上回る場合、若年層全体の所得を増加させる可能性がある
- 雇用主が賃金に対し市場支配力を持つ希有なケースでは、最低賃金の導入が若者の雇用を促進する可能性がある
- 最低賃金導入に関する研究に見られる否定的な実証結果は、方法論的な欠陥によるものと主張する研究もある
マイナス面
- 若年非熟練労働者の競争的な労働市場では、最低賃金は若者の雇用を減少させる
- より高い(最低)賃金の仕事に就けなかった若者は、労働市場への参入が遅れ、生涯所得が減少する
- 求職者数の増加と求人数の減少により、若者の失業を生み出す
- OJTの機会が奪われ、その結果、生涯所得が減少する
著者からのメッセージ
実証的エビデンスは、最低賃金が若年未熟練労働者の雇用を減らし、失業を生むことを示している。一部の若者が賃金上昇の恩恵を受ける一方で、仕事を見つけられず労働市場への参入が遅れ、生涯所得が減少する若者もいる。エントリーレベルの労働者向けの「最低賃金未満の訓練賃金」がなければ、雇用主はOJTの機会を制限する可能性があり、これも生涯所得の減少につながる。政策立案者は、最低賃金の代わりに、現金や現物支援など、歪みの少ない手段で若年未熟練労働者を支援すべきである。
本稿は、2024年12月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。