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失業給付と失業
失業給付の課題は、副作用を最小限に抑えつつ、労働者を保護することである

ロバート・モフィット
Johns Hopkins University, USA, and IZA, Germany

コ・ウォンシク
Johns Hopkins University

概要

あらゆる先進国には、失業期間中の大幅な収入減から労働者を保護する失業給付制度がある。失業給付制度のおかげで、労働者は失業中でも基本的な消費ニーズを満たすことができ、資産の売却、条件に合わない職に就くといった事態を回避できる。また失業給付制度は、不況時の経済の安定化にも効果がある。しかし、過剰な給付は失業期間を長期化させ、失業率上昇を招く可能性がある。失業給付の政策上の課題は、副作用を最小限に抑えつつ、労働者を保護することである。

主な研究結果

失業給付制度のプラス面
  • 収入損失の一部を補填し、失業期間中の消費によって失業者の資産が枯渇することを防ぐ
  • 超低所得世帯の収入を補充し、貧困化を回避する
  • 労働者が、将来的に解雇されるリスクがあっても経済にとって重要な仕事を引き受けるよう、後押しする
  • 失業者が消費を維持しながらも、自分の能力に見合う仕事を探す時間を確保できる
  • 大きな悪影響を及ぼすことなく、不況時に失業者への追加支援の提供ができる
失業給付制度のマイナス面
  • 最大額の給付が長期間継続すると、失業期間の過度な長期化につながる恐れがある
  • 失業率はやや上昇するが、不況時にはその上昇幅が小さくなる
  • より高賃金の仕事やスキルに見合う仕事に就けるかに関して、研究結果のエビデンスは必ずしも一致していない
  • 公的なモニタリングが行われなければ、失業者は求職活動状況を過大申告し、失業状態が長期化する可能性がある

著者からのメッセージ

失業給付制度は、解雇された労働者の収入を確保するとともに、労働市場の長期的な生産性を向上させ、不況時の経済を刺激し、経済にとって不可欠な役割を果たしている。政府は、求職活動の意欲を削ぐほどの過度な給付を行わないよう注意を払うべきである。また、失業率や雇用創出への弊害を避けるため、求職活動状況のモニタリングを行う制度も必要である。

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本稿は、2024年6月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2024年7月2日掲載)を読む

2024年7月5日掲載