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発展途上国におけるオフショアリングと労働市場
発展途上国のオフショアリングと労働市場に関する教訓と今後の課題

Arnab K. BASU
Cornell University, USA, and IZA, Germany

Nancy H. CHAU
Cornell University, USA, and IZA, Germany

概要

発展途上国は、国際貿易におけるグローバルバリューチェーンの驚異的な拡大により、紛れもなく恩恵を受けているとみなされている。オフショアリングとは、生産業務の一部を国レベルで特化させるため中間財やサービスを国境を越えて取引することであり、これにより、発展途上国は、ゼロから完成品を作るまでのコスト効率の高い生産に必要な技術やノウハウをまだ得ていなくても、国際貿易に早期に組み込まれることが可能になる。しかし、経済学の文献によれば、やや微妙な見解もあるようだ。政策立案者は、企業間格差や賃金、労働基準、貿易政策による影響に関する問題について留意すべきである。

The rise and fall of global sourcing

主な研究結果

プラス面
  • 世界的な産業再編成は、参加国にとって相互に有益な効率向上をもたらす。
  • オフショアリングは労働需要拡大や生産性の影響により、雇用拡大や賃金上昇につながる可能性がある。
  • オフショアリングの参加国は、スキル向上を誘発する質の高い雇用の増加を経験している。
  • 一般的に、中間財のサプライヤーは、最終財のサプライヤーよりも低い関税が適用される。
マイナス面
  • オフショアリングは分配上の格差を招き、中小企業に悪影響を及ぼす可能性がある。
  • オフショアリングを行う国において、高スキル労働者と低スキル労働者の賃金格差が拡大する可能性がある。
  • オフショアリングを行う企業の労働者は、劣悪な環境で単調な仕事に従事することが多く、持続性、市場性のあるスキルを身につけることができない。
  • 各国は貿易政策や貿易コストの不確実性の影響をより受けやすくなり、グローバルバリューチェーンへの参加によって輸入障壁を設けようというインセンティブが変化する可能性もある。

本稿の主旨

グローバルバリューチェーンにおける発展途上国の位置づけは、中間財の低スキル生産者からビジネス・サービス提供の拠点に、さらに最近ではコンピュータ・プログラミングや医療専門サービス等の高スキル業務の製造拠点へと徐々に移行している。こうした背景を踏まえ、オフショアリングが発展途上国にもたらす労働市場への影響や政策的な意義は何か。本稿では、経済効率のトレードオフ、雇用と生産性の伸びと賃金の不平等、労働基準、貿易政策の影響という4つの次元でのトレードオフを政策立案者が考慮する必要性が強調されており、繊細な見方が必要である。

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本稿は、2022年9月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2022年10月20日掲載)を読む

2022年11月2日掲載