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難民の子どもたちの成人後の収入について
難民という立場と出身国が、新規移住する子どものその後の経済的成果を方向付ける

YOSHIDA Yoko
Western University, Canada

Jonathan AMOYAW
Dalhousie University, Canada

Rachel MCLAY
Dalhousie University, Canada

概要

世界的に難民が増加しているが、その約半数が子どもや若者である。こうした難民の子どもは、極度のストレスやトラウマなどによる特有の課題を抱えて再定住先の国に到着するため、ニーズに対応できるよう、個別の政策が必要とされている。しかし、新規で移住してくる子どもの経済的な軌跡に、「難民という立場」が長期にわたって及ぼす影響は、難民の出身国によって異なる。このことは、効果的な再定住支援と、難民のみならず新規の移民の子どもが直面する制度的障壁への取り組みの必要性を示唆している。こうした知見は、難民は特殊で比較的均一的な集団であり、同じような軌跡をたどるという一般的な概念を覆すものである。

Earnings trajectory of Vietnamese and Polish newcomer children in Canada, 1980-1994 arrivals

主な研究結果

プラス面
  • 難民は出身国にかかわらず、強制移住や暴力、トラウマなど、同じような経験をしている場合が多い。
  • 難民の子どもと難民以外の移民の子どもを比較した場合、両者の経済的な軌跡が類似していたとしても、両者の経験やニーズは異なることがある。
  • 再定住支援を行う際、同程度の経済的成果を得るために様々な道筋があるということを認識すべきである。
マイナス面
  • 難民は均一的な集団ではなく、出身国を後にする他の移民と共通する部分も多いと思われる。
  • 難民という立場が子どもの経済的成果に及ぼす長期的影響は、出身国と再定住国の両方の文脈的要因によって形成される。
  • 難民の子どもとそれ以外の移民の子どもには同程度の収入があるということは、難民という立場による影響は固定的なものではなく、一過性であることを示している。

本稿の主旨

移住の諸段階での大変な経験にかかわらず、難民は高い回復力を持っており、必要な支援を受けることができれば、難民の子どもは難民以外の移民の子どもと同様の経済的軌跡をたどる可能性がある。こうした知見は、難民が移住国の経済にほとんど貢献しないという誤解を否定するものである。心理カウンセリングや言語訓練といった難民の初期定住プロセスにおける支援や、制度的障壁を取り除くより広範な政策により、難民の子どもは、難民以外の子どもと同程度の収入を得る軌道を長期的に達成することは可能である。

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本稿は、2022年1月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2022年4月7日掲載)を読む

2022年4月13日掲載