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競争心のジェンダーギャップ
競争心の男女差によって、労働市場におけるジェンダーギャップをどの程度説明できるのだろうか。

Mario LACKNER
Johannes Kepler University Linz, Austria

概要

労働市場における成果のジェンダーギャップは非常に根強い。差別とは別に、競争心の男女差は、よく言われる説明のひとつである。ライフサイクルの各ステージにおける複数のことが影響し、競争心が形成されるということは、多くの実証的エビデンスによって示されている。競争心の男女差は、就労時の実績のみならず、幼児教育期の成果にも影響する。教育や労働市場におけるジェンダーギャップの是正には、競争心の男女差がいつ、なぜ生じるのかを理解し、その結果を研究することが重要である。

Gender gaps in educational performance and self-confidence

主な研究結果

プラス面
  • 競争意欲の男女差は、労働市場での成果の格差の原因のひとつである。
  • 競争心は早期に形成され、非常に持続的なことが実証的エビデンスによって示されている。
  • 場合によっては(例:職務上の特性の評価)、女性は意識的に競争心をあまり持たないことを選択するかもしれないが、その場合、直接的な介入をしても本質的に意味がない。
  • 競争心の男女差はむしろ流動的な性質を持ち、適切なツールを用いれば変えられる可能性が実証的に示されている。
マイナス面
  • 実証的な文献によると、様々な環境下で競争心の大きな男女差については、様々な設定、多くの状況において認められているが、その主な原因や原動力についてはいまだ議論の余地がある。
  • 競争しようという決定を明確に特定することは難しいため、実地調査による実証的エビデンスはまだ少ない。
  • 男性は自信過剰で競争心が強過ぎる場合もあり、競争心の男女差をなくすことがすべての状況において望ましいことではない可能性がある。
  • 競争心の男女差は、学生の(科目)選択において大きな役割を果たしていることがわかっている。

本稿の主旨

周知の男女間賃金格差に加えて、世界的に見ても、トップレベルの仕事に女性が占める割合は低い。これを説明する明白な理由のひとつは、差別である。また、実証的な研究でも示されているが、競争心の違いによっても説明できる。競争心の男女差は、労働市場における成果のジェンダーギャップを部分的に説明することができる。今後の課題は、労働市場における男女平等の達成のため、競争心の男女差がもたらす悪影響を軽減することである。教育制度を改革することにより、女性の競争心を促し、教育に関する女性の選択に影響を与える一助となるかもしれない。特定の科目において男女別の教育を検討することがひとつの可能性として挙げられる。どのような介入も、幼少期に行うのが最も効果的であることが複数のエビデンスによって示唆されている。一方、競争に関する選好は経時的に変化することがわかっている。

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本稿は、2021年11月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2021年12月24日掲載)を読む

2021年12月28日掲載