概要
企業城下町(one-company town)は比較的珍しい。鉱山採掘などと関わりが深く、ほとんどは交通の便が悪い場所にあることが、過去の計画経済圏の際だった特徴である。雇用は企業1社にほぼ集中し、その企業は地域サービスの財源の大半を担っている。これまでに企業が再編や撤退を余儀なくされる事態が起きた場合、問題となってきた。単に雇用喪失を回避するための補助金交付ではなく、雇用の配置転換や地域サービスの財源に関する具体的な政策を定めておく必要がある。
主な研究結果
プラス面
- 遠隔地において、特に労働力供給の面で資源制約に対処しやすい。
- 従業員の給与水準は比較的高く、定職率が高い。
- 企業は利益を追求すると同時に従業員を大切にし、住宅、教育、育児など高水準のサービスを提供してきた。
- 民間と公共機関による資金提供の組み合わせにより、良質な都市計画が実現してきた。
マイナス面
- 企業城下町のショックに対する脆弱性は、ある分野に特化していることとその分野以外の活動がその地域内で限られていることからより顕著となる。
- 企業は収益性とほとんど関係なく地域サービスへの資金提供を担っているため、ショックに対する地域の脆弱性がより高くなる。
- 従業員は企業に特化したスキルを習得しているため、その企業が撤退して失業した場合、外部での就業機会や再就職の選択は限定される。
- 雇用の代替的選択肢に関する情報が少なく、流動化を実現する財源も不十分なため、雇用の流動性・柔軟性が低い。
本稿の主旨
過去100年の間に企業城下町の数は大きく減少した。それでも、雇用の集中はとりわけ過去の計画経済圏において依然として深刻な問題である。とりわけ、大企業が基礎的なサービスを提供し、主な財政基盤を担っている場合、ショックを吸収することは難しい。企業再編が必要になると、政府は地域の失業者急増を避けるため、思い切った決断には及び腰になる。政策立案者は企業を延命させるに過ぎない補助金交付ではなく、情報・財政面の支援を通じて、従業員再教育の提供や雇用の流動性を推進するべきである。
本稿は、2018年3月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。