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職業資格制度・規制の影響
職業資格制度は、資格保有者にとっては賃金やメリットが増える可能性があるが、消費者にとっての明確なメリットはなく、職業への門戸が狭められてしまう可能性がある

Morris M. KLEINER
ミネソタ大学

概要

第二次世界大戦後、先進国の労働市場で最も急速に普及した制度の1つが職業資格である。これまでの経済学研究によると、資格は賃金決定、労働者が仕事を得られるまでに要する時間、年金・健康保険給付、価格などに影響を及ぼすという。一方、資格制度によって先進国のサービスの質や健康状態、安全性が向上するというエビデンスはほとんどない。国民に一定のコストがあるにもかかわらず、職業資格制度が拡大しているのはなぜなのか。

Occupational licensing has grown substantially in the US

主な研究結果

プラス面
  • 職業資格取得による賃金プレミアムは、資格取得の難易度と正の相関がある。
  • 一般に資格が必要とされる職業に就くことは、学歴とスキルは同水準だが資格を持たない個人と比較して、時給が高い。
  • 資格制度は、低所得の職業の賃金と雇用機会を長期的に増加させる。
  • 政府機関の認証によって、専門家の質に関する情報を提供し、資格制度による独占効果も低減することができる。
マイナス面
  • 特定の職業に就くことや国や州などの行政区域を超えての移動が困難になり、資格が必要な職業における雇用機会が減少する可能性がある。
  • 資格制度によってサービスの価格は上昇するが、全体的なサービスの質の面で明確なメリットは示されていない。
  • 資格取得のために追加的要件が課されると、低スキル・低所得の労働者は、賃金がさらに低く、簡単にみつけられる、資格が不要な仕事(清掃作業員やウェイターなど)に追いやられてしまう可能性がある。
  • 資格制度による賃金プレミアムは主に、競争が減少すること、サービスの質が高いという認識によるものであり、所得格差の拡大と関連しているかもしれない。

本稿の主旨

職業資格制度による賃金面のメリットは、主としてすでに高い給料を得ている人々に集中している。職業資格制度によって流動性が阻害され、労働者が他地域で雇用機会を得ることが困難になる可能性がエビデンスによって示唆された。さらに、職業資格制度によって多くの業種で提供されるサービスの質が実際に向上したことを示すエビデンスはほとんどないが、サービスの価格が上昇し、経済生産量が抑制されたことが示された。したがって政府は、資格に関する新たな規則を導入する前に費用便益分析を義務づけ、専門家が経済的不利益を被ることなく国境を超えて活動できるよう、また一部の職業の規制を緩和するべきである。

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本稿は、2017年10月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2018年1月16日掲載)を読む

2018年2月5日掲載