プログラム:人的資本

日本経済社会の活力回復と生産性向上のための基礎的研究

プロジェクトリーダー/サブリーダー

西村 和雄 顔写真

西村 和雄 (ファカルティフェロー)

リーダー

プロジェクト概要

バブル後四半世紀に渡る我が国の長期停滞の深刻さは各種のデータに現れている。スイスのIMD(国際経営開発研究所)による、2020年の世界競争力ランキングでは、1位シンガポール、2位デンマーク、3位スイス、5位香港、10位米国、11位台湾、20位中国、23位韓国、27位マレーシア、29位タイに対し、日本は34位である。2018年の一人当たりの名目GDPでは、米国が5位、シンガポールが8位で、香港(15位)も日本の23位よりも高い。韓国は27位で日本に迫っている。これは、日本が、1990年以降、低い経済成長にとどまっていたことに主な原因がある。

本研究は、人的資本と経済の生産性について、複雑系の見地から理論・実証研究を行う。人的資本を明示したマクロ経済の非線形動学分析を行うと同時に、ミクロでは異なる個人の行動経済学的分析と、アンケート、脳計測と解析を行っていく。いずれも、学際的なアプローチをとるものである。

資本は投資によって価値を増加させることができるように、人間が持つ知識や技能も教育投資によって増加することが可能である。最近では、労働者を、その能力を含めて、人的資本と呼ばれている。人的資本は、経済成長を左右する重要な変数である。

人的資本の生産性に対する寄与の実証研究では、読み・書き・そろばんと言った認知能力だけでなく、コミュニケーション能力といった非認知能力の生産性への影響を分析し、就学前教育投資を重視している。

我々は、人的資本の実証研究として、これまで、数学教育、理系教育、物理教育の効果について、などと比較検討した研究を発表し、2014年には、幼児期にしつけられた規範が、学歴や所得と相関することを明らかにした(RIETI DP 14-J-011)。これは、上の就学前教育が最も生産性を高めるという結果とも符合している。2017年には、学習指導要領が変更された年で年代を分け、高校時代における理数系科目の学習状況の変化と、技術者になってからの特許出願数と特許更新数の関係を分析し、学習指導要領の改訂とともに、技術者の特許出願数と特許更新数が減少してきたかを明らかにした(RIETI DP 17-J-015)。

本研究では、問題に取り組むに当たり、特に以下の3点に注目する。第1点は「異なる経済主体からなる経済の動学的性質」、第2点は「人的資本の蓄積に関する理論的分析及び実証的分析」、第3点は「異なる経済主体の認知と意思決定の分析」である。第1点に関しては、まず、閉鎖経済の他部門成長モデルの動学分析を行い、それを基に、多数の国の間の貿易を通じた国際連関の動学を分析することである。第2点については、人的資本が経済成長や景気循環において果たす役割を経済動学モデルで理論的に分析する。次に、教育が人的資本蓄積において果たす役割を実証的に分析する。第3点については、経済主体の認知のあり方が、学習や意思決定にどのような影響を与えるかについて、脳活動計測を行い、解析を行う。さらに、以上の研究結果を、実際に公立学校教育に応用することで、人的資本の向上を具体化する。

プロジェクト期間: 2021年12月20日 〜 2024年5月31日

(上記プロジェクト期間のうち、研究活動期間は2021年12月20日 〜 2023年11月30日とし、データ利用報告期間は2023年12月1日 〜 2024年5月31日とする)