2004年度主要政策研究課題

III. 公的負債、年金、医療、介護、保育に対する総合的アプローチ

財政赤字や巨額な政府の債務残高問題にとどまらず、年金、医療、介護など社会保障問題も含めて総合的な新しい「高齢化の経済学」を作り、日本の財政における問題を明らかにします。

(A) 巨大な公的負債の維持可能性

1. 最適な租税・社会保険料負担率

代表フェロー

概要

我が国では税や社会保険料の負担率を50%以下に抑える議論があるが、その根拠は薄弱である。たとえば負担率が70%前後の国でも経済は好調な国がある一方、30%前後の国の中にも経済不調なものもみられる。税や社会保険の負担はあっても、そのベネフィットを国民が受けているわけで、その事実を考慮しても我が国の負担率を50%以下に抑える必要があるかどうか検証する。いわば最適の負担率を求めるプロジェクトである。モデルによるシミュレーション分析等を進めていく。

この研究の成果は、年金だけでなく医療、介護を含めた今後の社会保障制度全体の包括的検討にも、その前提として重要な寄与を果たすものと考える。

主要成果物

  • 継続プロジェクトにつき、引き続き研究を実施中

(B) 社会保障問題の包括的解決をめざして:高齢化の新しい経済学

1. 社会保障研究

代表フェロー

主要成果物

  • 継続プロジェクトにつき、引き続き研究を実施中

(C) 理想的な年金制度はいかにあるべきか:新しい制度を探る

1. 社会保障研究プロジェクト?「高齢化の経済学」の確立を目指して?

代表フェロー

概要

我が国は、今後、人口高齢化率(高齢者/労働力人口の比率)の上昇が急速に進み、年金支給額(消費)/GDP(労働力人口に依存)の比率が上昇し、経済のパイが増えなくなり、やがて社会保障そのものが成立しない恐れが生じている。このため、年金をはじめとする社会保障制度全般の見直しが不可避となっている。

この研究プロジェクトでは、社会保障に関わる基本的な問題を、広く、長期的観点から理論的に明らかにし、全体として「高齢化の経済学(Economics of Ageing)」の確立を目指す。

当面は、
(1)望ましい年金制度の条件?1)望ましい給付率の水準、2)各個人の保険料と各個人の給付が等価になる仕組み(保険数理的公正(actuarial fairness)の確保)、3)保険料率と給付率の間のtrade-off関係、
(2)公的年金制度に必然的に発生する年金純債務、
(3)なるべく高い経済成長率を維持するのに斉合的な公的年金制度、
(4)NDC(賦課方式の年金の下で保険数理的公正を追求する方法)の日本への適用可能性等について、理論的整理、社会保障制度を明示的に組み込んだマクロ経済モデルによるシミュレーション分析等を行う。

(D) 労働市場参加へのインセンティブ、労働移動、社会保障との関係

1. 労働移動研究

代表フェロー

概要

我が国の企業と労働者の関係が、これまでの社会の安定と経済効率を支えてきた「保障と拘束」の関係から「自己責任と自己選択」を求める関係に移行しつつある。これに伴い、個人の自己選択を支える社会的基盤として、企業外部の労働資源配分を行う「外部労働市場」が機能することが必要であるが、現状ではその機能が十分でないため、ミスマッチに基づく失業が増大している。外部労働市場を機能させるためには、雇用機会の創出とともに、職業紹介と能力開発のシステムを整備していく必要がある。

本研究では、外部労働市場の機能向上を通じた円滑な労働移動の実現に寄与するため、ミクロデータによる統計分析を行い、とくに日米欧の国際比較を通じ、また、事例研究も踏まえ、我が国が抱える雇用創出や職業紹介、能力開発支援の問題点を明らかにし、改善策を検討していく。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

2. 高齢者雇用研究

代表フェロー

主要成果物

  • 継続プロジェクトにつき、引き続き研究を実施中

3. 男女共同参画社会における女性活用策

代表フェロー

概要

女性が働きやすい環境を整備し女性の能力を引き出すようさまざまな公共政策が実行されているが、なかなか日本ではそれが成功しない。

本研究では、これまで必ずしも十分検討されてこなかったもっと本質的な問題があるのではないかという視点から分析を行っている。たとえば、女性への学校教育、企業におけるキャリア政策、男性の非協力、子供の教育への母親の負担、女性からみて公共政策の採用が困難、等々の課題について、経済学だけでなく社会学、教育学等学際的な実証研究を行うことにより、さまざまな実態が明らかとされてきている。

主要成果物

RIETI政策シンポジウム

4. スポーツ産業政策

代表フェロー

概要

スポーツという概念の成立を歴史的に検証し、「近代」というパラダイムからの社会的要請に応える何か(それを社会的便益(Social Performance)と定義する)が、スポーツに存在するということを明らかにする。

次に、そうしたスポーツの有する特性を踏まえ、今後の日本にとって有用なものは何かを検討する。その際、特に社会的便益の重要な要素である、経済的な価値と産業化/市場化の可能性について考察する。「第三次産業の領域におけるスポーツ産業の潜在的可能性は高く、日本経済にとっても重要な産業である」との仮説を検証する。

その上で、「スポーツ産業政策」とはどのようなものか、どのようなものであるべきか、について考察し、具体的な政策提言としていくつかの試論を提示する。

主要成果物

RIETIコラム

出版物