データ・統計

R-JIPデータベース2014

都道府県別産業生産性(R-JIP)データベース2014について

地方を中心に急速に進展する高齢化・過疎化や製造業で加速する生産の海外移転等により、地域間経済格差や産業の地域分布の動向、地方財政の維持可能性、等について不確実性が高まっている。各国間の所得・労働生産性格差に関する最近の研究では、EU KLEMSデータベース・プロジェクトに代表されるように、産業別に資本ストックや労働の質を推計し、物的・人的資本蓄積や産業構造の変化、産業別の全要素生産性(TFP)の動向等で各国間の所得・労働生産性格差の原因や経済収束を説明しようとする分析が行われるようになった。しかしこのアプローチは、日本を含め一国内の地域間所得格差に関する研究ではあまり採用されていない。これはおそらく、必要な国内地域別・産業別データを得ることが難しいためであると考えられる。

このような問題意識から経済産業研究所(RIETI)の「産業・企業生産性向上」プログラムにおける「東アジア産業生産性」プロジェクトでは、一橋大学経済研究所と協力し、日本の地域間生産性格差や産業構造を分析するための基礎資料として、「都道府県別産業生産性データベース」(Regional-Level Japan Industrial Productivity Database、略称R-JIP)を構築した。

今回公表するR-JIPデータベース2014(以下、R-JIP2014とする)は、1970年から2009年に関する、47都道府県別(沖縄県は1972年から)×23産業別に全要素生産性を計測するために必要な、名目・実質付加価値、質の違いを考慮した資本・労働投入、産業別全要素生産性水準の県間格差と県別産業別全要素生産性上昇率の計測結果、等の(暦年)年次データから構成されている(一部データはベンチマーク年のみ)。前回公表したR-JIP2012の改訂版である。

姉妹編である日本産業生産性(JIP)データベースが、産業部門の詳細な情報(現行は108部門)と中間投入行列の情報を含み、日本全体の産業の詳細な生産性分析を行うことができるデータベースとして構築されているのに対して、R-JIPデータベースは都道府県別の産業の情報を補完するものである。ただし、R-JIPデータベースでは都道府県別情報が加わった一方で、利用可能なデータの制約から、産業部門数を23部門とし、中間投入の情報はなく粗付加価値ベースの産出量を使うといったように、姉妹編のJIPデータベースと比較して簡略化されている。しかしながら、生産要素の質の違い(時系列では労働及び資本投入、クロスセクションでは労働のみ)を考慮した生産性の地域間比較が可能なデータベースとして特色のあるものであることを自負している。

R-JIP2014推計の主な参加者は次のとおりである。

  • 徳井丞次(信州大学・経済産業研究所)
  • 深尾京司(一橋大学・経済産業研究所)
  • 牧野達治 (一橋大学)
  • 宮川努(学習院大学・経済産業研究所)
  • 川崎一泰(東洋大学)
  • 新井園枝(経済産業研究所)
  • 児玉直美(一橋大学・経済産業研究所)
  • 水田岳志(日本大学中国アジア研究センター非常勤研究員)

各変数の推計方法の詳細については、RIETIのディスカッション・ペーパーである次の論文、及びそれらを改訂した一橋大学経済研究所『経済研究』第64巻第3号、2013年7月掲載の論文を参照されたい。

  1. 徳井丞次・深尾京司・牧野達治・宮川努・荒井信幸・新井園枝・乾友彦・川崎一泰・児玉直美・野口尚洋
    都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析

  2. 徳井丞次・牧野達治・児玉直美・深尾京司
    地域間の人的資本格差と生産性

以上の論文でも述べたように、R-JIP2014も、R-JIP2012と同様に、1)都道府県間の絶対価格差を考慮していない、2)同一産業における資本の質は県間で同じと仮定、3)地域間の労働の質の差の推計は10年毎のベンチマーク年のみ、4)帰属家賃は生産から除く、5)本社機能サービスの他県への提供の扱いが東京とそれ以外の県で非対称、など改善すべき幾つかの課題を持っている。我々は今後、R-JIPの改訂と更新を行いたいと考えている。

徳井丞次
深尾京司
牧野達治
宮川努

※データのご利用にあたって

データをご利用の際は出所として、R-JIP2014を利用した旨、明記して頂くようお願いします。また、本データを利用して論文を作成・発表される場合、コピーを一部お送りくださるようお願いします。

お問い合わせ
一橋大学経済研究所JIPデータベース室
e-mail:jip-info@ier.hit-u.ac.jp

ダウンロード

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R-JIPデータベース2014 [XLSX:7.02MB]

15年5月18日更新

1970年から2009年まで毎年(暦年)の都道府県別産業別データベースである。以下の各系列が収録されている。

  1. 付加価値
    1. 1) 実質(2000年価格、100万円)
    2. 2) 名目(100万円)
  2. 資本
    1. 1) 実質資本ストック(2000年価格、100万円)
    2. 2) 名目資本コスト(100万円)
    3. 3) 質指数(資本、全国共通)(2000年=1.000)
  3. 労働
    1. 1) マンアワー(就業者数*就業者1人あたり年間総実労働時間/1000)
    2. 2) 名目労働コスト(100万円)
    3. 3) 質指数(労働、全国共通)(2000年=1.000)
    4. 4) 質指数(労働、都道府県別)(2000年=1.000)
    5. 5) 就業者数(人)
  4. 参考系列
    1. 1) 人口(人)
    2. 2) 1人あたり県民所得(1000円)

なお、データ作成の詳細については「都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析」(RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-037)を参照されたい。


労働生産性格差分析用ワークシート [XLSX:3.19MB]

15年5月18日更新

都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析」(RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-037)における労働生産性地域間格差(図3、4)を計算するためのワークシートである。「地域間の人的資本格差と生産性」(RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-058)において作成した、都道府県別産業別労働の質格差指数のデータを含む。なお、R-JIP2014への改訂に伴い、2009年における労働生産性地域間格差分析用のデータ、図を新たに追加している。


成長会計分析用データ [XLSX:5.82MB]

15年5月18日更新

都道府県別産業生産性(R-JIP)データベースの構築と地域間生産性格差の分析」(RIETIディスカッション・ペーパー 13-J-037)における都道府県別成長会計分析(図5)に利用したデータセット(1970年から2009年の時系列)である。資本コストシェア、名目付加価値シェア以外のデータは、全て成長率(年率、%)で表示されている。


都道府県別マクロ労働生産性格差、成長会計分析用データ [XLSX:143KB]

15年5月18日更新

Kyoji Fukao, Jean-Pascal Bassino, Tatsuji Makino, Ralph Paprzycki, Tokihiko Settsu, Masanori Takashima, and Joji Tokui "Regional Inequality and Industrial Structure in Japan: 1874-2008"(一橋大学経済研究所、欧文経済研究叢書No.44、2015年3月)における1955年以降のベンチマーク年の都道府県別マクロ労働生産性格差分析(第5章 Figure 5.1、5.2)と、都道府県別成長会計分析(第5章 Figure 5.3)に利用したデータセットである。データ作成の詳細については、同書のAppendix 3、4を参照されたい。なお、本データはR-JIP2012に対して簡易修正を加えたものであるため、R-JIP2012やR-JIP2014とは一致しない。