欧米の政府債務危機と日本の岐路:投稿意見

中島 厚志
理事長

成熟国としての岐路の選択

上席研究員 小野 五郎

日本の債務削減と生産性向上が必要なことは論を待たない。が、その過程で生ずる「痛み」に対して誰もが自分だけは避けたいと願い、その気持ちを最大限忖度しようと政府がしている現状では実現不能である。特に逃げ道(単なる時間稼ぎ)として「成長」を用意している限り、いずれ破局を迎えることになる。すなわち、「日本の債務削減と生産性向上」について声を大にして叫び続けることは必要だが、それだけでは不十分である。

「欧米経済の日本化」などと言うが、真相は「日欧米の成熟化に伴う必然」にすぎず、必要なのは「成熟社会に合った、身の丈にあった経済社会構造への変革」であって、それ以外の何ものでもない。それも、配分可能なパイが生まれていた成長期に何もせず、資源や時間を空費してきた以上、相当の「痛み」を覚悟したものとならざるをえない。

それは、第1に、大震災復興経費は別として、プライマリーバランスなどと矮小化せず、全面的に予算均衡化を図るということである。将来ともに必要最低限の保守と震災復興以外の公共投資からは全面的に撤退する。福祉関連も聖域扱いせず、最低限のセーフティネットを残して、後は個々の自助努力・自己責任と割り切るくらいの意気込みが求められる。

第2に、生産性向上についても、すでに限界に達した個別分野よりも社会全体としての取組み。安全保障上最低限必要なものを残して後は市場原理に委ね、これまで保護されてきた低生産性部門からの撤退と今後高生産性が期待できる分野へのシフトを図る必要がある。

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