RIETIについて

理事長挨拶

矢野 誠顔写真

矢野 誠RIETI理事長

2020年4月1日をもって、RIETIの理事長を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。9年間にわたり多大な実績を残され、昨日、退任なさった中島前理事長の後を受けて、仕事をさせていただくということで、強く身が引き締まる思いです。

特に、新型コロナウイルスが蔓延し、まさに今日と明日では状況がまったく異なるかもしれないという不確実な社会状況で、役職員の皆様とともに、わたしたちが今何をすればよいかという問題を考え、最善の道を選択するように努力する決意です。

諸外国の例を見ても分かるように、ウイルス感染自体がすぐに終焉するということは考えにくいでしょう。その意味では、爆発的な感染が始まった場合、秋まで収束しない場合、さらには、冬まで収束しない場合など、いろいろな状況を想定して、将来の計画を立てていく必要があります。たとえ、大流行が収まったとしても、特効薬や予防ワクチンが開発されるまでは、病気が克服されるわけでもないでしょう。

最悪の状況を考えていけばきりがありませんが、RIETIには、日本やアジアを代表する政策シンクタンク・政策研究機関として与えられた責務があり、それを全うするとともに、さらに、発展させていくことを考えなくてはなりません。そのためには、今、何をすればよいのか。それを真剣に考える必要があるでしょう。

簡単に言うと、社会科学とは、モノの使い方、使うシステムの作り方を研究する学問です。そういう社会科学を研究する機関として、RIETIが、今、迫られている懸案に、RIETIの「仮想組織機能」の充実があると考えます。つまり、インターネットを通じたオンライン会議、セミナー、講義、研究会などを活用し、情報ネットワークの拡充を図るという意味です。日本は、社会全体のオンライン化において、欧米だけでなく、中国や韓国からも遅れつつあります。例えば、多くのアメリカの大学では、コロナウイルスの流行とともに、大学の講義のオンライン化が急速に進んでいます。社会科学研究機関としてのRIETIは我が国の「仮想組織機能」の充実を実験し、牽引する組織でなくてはならないと考えます。社会科学の発展には、人と人とのコミュニケーションを通じ問題意識を共有し、その問題意識に対し、自分たちでしか作りえない独自の解答を作る必要があります。

RIETIの第5期中期計画では、文理融合が研究活動の一つの中核に位置付けられています。我が国の科学技術政策は、長い間、科学技術は自然科学者たちだけが研究すればよいものだという考え方に立ってきました。科学技術基本法では、人文系を除く科学の推進が目的とされ、社会科学はわきに置かれてしまってきました。わたしは京大時代からこの法律を改正し、人文学を位置付けることをさまざまな方にお願いしてきており、今日、やっとそれが実現しました。それと時を同じくし、みなさまとともに、政策研究機関として「文理融合研究」という新しい視点を含めた経済学研究や、政策シンクタンクとしての「EBPMの推進」や「データの整備と活用」に携わっていけることは大きな喜びです。

現在の難局をみなさまとともに乗り越え、新しい社会の構築に貢献していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

2020年4月