RIETIについて

所長挨拶

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森川 正之RIETI所長・CRO

2021年度は、変異株の感染拡大もあって、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が1年間の約2/3にわたり発動されるなど、コロナ禍の1年間でした。RIETIの活動も引き続きさまざまな制約下に置かれ、研究会、セミナー、シンポジウムは全てオンライン開催となりました。こうした中、171本のディスカッション・ペーパーを公表し、トップクラスの国際的な学術誌を含めて79本の論文が公刊されるなど、昨年度を上回る成果を挙げることができました。

世界経済危機や東日本大震災もそうでしたが、大きなショックは新しい研究の契機にもなります。新型コロナに関連するRIETIのディスカッション・ペーパーは、昨年度からの累計70本を超え、多くの論文がすでに国際的な学術誌に公刊されています。外出自粛やワクチン接種の効果、家計や企業への支援策の実証的評価など、政策含意に富む成果も多数生まれ、政府の政策決定過程でも活用されました。方法論的にも、企業や個人を対象としたRIETI独自のサーベイに基づく分析、感染症の疫学モデルと経済モデルを融合させた文理融合型の研究、携帯電話の位置情報やPOSデータなどのオルタナティブ・データを活用した分析など多くのユニークな研究が行われています。

エビデンスに基づく政策形成(EBPM)に関連する研究も、一段と活発化した1年間でした。個々の政策を実証的に評価する論文は40本近くにのぼり、昨年度よりも大幅に増えました。中小企業補助金、信用保証制度、投資促進税制、関税制度といった経済産業省が直接関わっている政策だけでなく、社会保障制度、労働市場制度、土地利用規制など経済全体に影響する諸制度を扱った研究もあります。質的な進歩も見られ、ランダム化比較試験(RCT)、回帰不連続デザイン(RDD)、DID推計といった政策効果の因果推論の手法を用いた論文のシェアが近年顕著に増えています。政策研究の世界的な潮流に沿った動きと言えるでしょう。こうした中、EBPM関連研究をさらに充実するため、2022年4月には所内にEBPMセンターが設置されました。

2022年度も新型コロナの影響が続くと予想されますが、ほかにもロシアのウクライナ侵攻に伴うサプライ・チェーン問題、原油・食料品価格の高騰や労働市場のタイト化を反映した世界的なインフレ懸念の高まりなどの新たな課題が現れています。今後も予期せざるショックは起こり得ますし、少子高齢化・人口減少、潜在成長率の低迷、経済格差の拡大、財政の持続可能性など、コロナ危機以前から持ち越している政策課題が山積しています。こうした中、政策研究機関として、政策的にも学術的にも一層の貢献を果たすべく、尽力していきたいと考えています。

2022年4月