RIETIについて

所長挨拶

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森川 正之RIETI所長・CRO

2022年度も新型コロナの影響が続きましたが、年度後半には出入国制限の緩和、マスク着用ルールの見直しなど、経済・社会活動の正常化に向けた動きが見られました。

一方、ロシアのウクライナ侵攻を契機としたサプライチェーン問題、原油・食料品価格の高騰や労働需給のタイト化を反映した世界的なインフレ傾向など、新しい政策課題が現れています。

RIETIの活動は、引き続き新型コロナの諸制約を免れませんでしたが、昨年度を上回る185本のディスカッション・ペーパーを公表し、2001年にRIETIが発足して以来の研究論文数は3,000本を超えました。約70本の論文が国際的な学術誌に公刊されましたし、『発明の経済学』(長岡貞男著)、『中小企業金融の経済学』(植杉威一郎著)という2冊のRIETIブックスが、日経・経済図書文化賞を受賞しました。全体として、量的にも質的にも優れた研究成果を挙げることのできた1年間だったと考えています。

エビデンスに基づく政策形成(EBPM)に関連する研究も活発化した1年でした。2022年度初めに「EBPMセンター」を新設し、RIETIの政策評価研究体制を強化しました。個々の政策を実証的に評価するタイプのディスカッション・ペーパーは40本を超え、昨年度を上回っています。また、先端半導体の製造基盤整備事業、グリーンイノベーション基金事業など、標準的な因果推論による分析が難しい政策を対象とした助言活動にも着手しました。

例えば、通商政策分野では、地域貿易協定、原産地規則、国際投資協定、輸出展示会、越境電子商取引支援、貿易のための援助など、多くの政策を対象に実証研究が行われました。イノベーション関係では、公的研究開発プログラム、研究開発税制の事後評価に加え、国立大学法人化、科研費審査の仕組み、留学支援奨学金といった関連する諸制度の効果分析も行われました。環境・エネルギー分野では、排出量取引、節電ポイント、自動車のグリーン化などを対象とした論文が公表されています。

現行中期計画の最終年度に当たる2023年度、新型コロナの影響はさらに緩和されると期待していますが、サプライチェーン問題、世界的なインフレなどの新しい課題、また、少子高齢化・人口減少、潜在成長率の低迷、財政の持続可能性といった積年の課題があります。こうした中、政策研究機関として、政策的にも学術的にも一層の貢献を果たすべく、尽力していきたいと考えています。

2023年4月